
一日にどれくらい、洗濯の手間や時間をかけていますか?高度経済成長期、日本では洗濯機が「三種の神器」として登場し、家事労働を大きく軽減しました。しかしアフリカの多くの国では、洗濯機はまだ普及しておらず、今も多くの時間が洗濯に費やされています。
そうした課題に対し、長野県塩尻市のある企業が立ち上がりました。アフリカ各国にセルフサービスのコインランドリーを展開し、洗濯機での洗濯を当たり前にすることで、現地の人々の暮らしを少しでも楽にしようとしているのです。
事業を展開しているのは、「株式会社ライフブリーズ(以下、ライフブリーズ)」代表の立石宗一郎(たていし・そういちろう)さん。ながの人事室でも取材経験がある、長野県塩尻市を中心にガソリンスタンドや24時間ジム、コインランドリー事業を展開する「株式会社立石コーポレーション(以下、立石コーポレーション)」の3代目代表取締役社長でもあります。
今回の求人は、立石さんと一緒にアフリカでの事業展開を推進していく仲間となる人。家業である立石コーポレーションで長らく事業を行なってきた立石さんが、今なぜアフリカの事業に着手することになったのか。その経緯や事業に感じている可能性を探るため、立石コーポレーションのオフィスを訪ねました。
以前の記事はこちらから
・途上国で見た子どもたちの笑顔を、いつも胸に。暮らしを豊かにする事業づくりで、地域社会に貢献する
・脱炭素時代も求められる企業づくりとは。ガソリンスタンドから、地域の生活インフラを担う企業へ
自分で洗濯することはかっこいい
中央自動車道の塩尻ICから、国道を車で5分ほど。ライフブリーズのオフィスは、親会社である立石コーポレーションの社屋の中にあります。

立石さん「ライフブリーズは、セルフサービスのコインランドリーサービスをフランチャイズ事業としてアフリカに展開しています。立ち位置としては、全てのフランチャイズ店舗を束ねる総本部。例えば、すでにオープンしているモザンビークやケニアの店舗の人員研修や、マニュアル作成など店舗管理を行なうほか、日本でのサプライヤーと連携しながら日本製のコインランドリー機を現地に設置するなど立ち上げの支援をしています」
セルフサービスのコインランドリー事業は、もとはといえば立石さん自身が2020年から塩尻市を中心に展開してきたもの。それをアフリカで展開するきっかけとなったのは、モザンビークからの留学生、セルジオ・モライス(以下セルジオ)さんとの出会いでした。
立石さん「2年前くらいに、知り合いから『自国でランドリーをやりたいというアフリカからの留学生がいるんだけど、会ってみないか』と紹介されて。彼になぜランドリー事業なのかと尋ねると、モザンビークでは洗濯物を週に6〜8時間くらい手洗いする現状があることを知りました」

当初は、アフリカでのフランチャイズ展開も全てセルジオさんが担うという話でしたが、アフリカでランドリー事業を行なうことによる社会的な意義を知り、立石さんは事業に深くコミットすることを決めます。
立石さん「コインランドリーを使えば、長時間かかるのが当たり前だった洗濯や乾燥がコーヒーを片手に1時間で終わる。浮いた時間で他の家事をしてもいいし、家族との時間を過ごしてもいい。働いてもいいし、勉強してもいいみたいな、自由な時間が生まれることを考えると、めちゃくちゃでかいインパクトだなと」
現地での市場調査や物件探しなども、全て立石さんがアフリカ地域へ出向いて開拓をしてきました。
立石さん「立地上は生活拠点に近いところであるに越したことはないのですが、ただ、使い方が全然違うのでそもそも日本での正攻法ではないというのは始めてから感じているところです。また、向こうにいくといわゆる商圏マップや人口マップとかがそもそもないので、『これだけ人歩いていればいい感じじゃないの』とか、感覚に頼るしかないところもあります」

地道な事業立ち上げのプロセスを経て、誕生したブランド名は「セルフィー」。“自分でやる”や“自分で撮る”などの意味があるセルフィーには、「自分でやることがかっこいい」という文化にちょっとずつシフトしていけたらという思いが込められています。

立石さん「日本では一般的なセルフのコインランドリーやガソリンスタンドも、アフリカではまだ未解禁。インフルエンサーなどがミュージックビデオのロケ地に選ぶことも多く、アフリカの若者からは“かっこいい場所”として認知されています。コインランドリーに対するそもそものイメージが異なるのも面白いです」
社会課題を解決をするのがビジネス
2025年11月現在、セルフィーブランドとしてはモザンビークとケニアでの2店舗が稼働中。モザンビークは3名の現地スタッフ、ケニアは9名のチームで現地での店舗を運営しているといいます。

今後は、立ち上げのそうしてサポートをした店舗にエリアリーダーのポジションとなってもらいながら各国の店舗展開やエリアマネジメントをしてもらう予定。各エリアごとの店舗の管理や経営を見てもらいながら、ブランドとしての事業全体のマネジメントを行なっていくのが、ライフブリーズの主な役割となります。
社名のライフブリーズは、洗濯物が風になびく様子や、そこに吹くそよ風のイメージから。ブリーズには楽にしたり簡単にしたりする意味合いも。事業を通じて誰かの暮らしをちょっとでも楽にしたいという思いが込められた背景には、「1億人の子どもを笑顔にしたい」という立石さん個人の夢があります。
立石さん「アフリカからのインターン生に対して会社のことを話したり、カンファレンスで事業を説明したりすると、多くの人から『こんな事業をやってくれてありがとう』と言われるわけですよ。そこで改めて、ビジネスの価値の大きさを実感しましたね。ビジネスってきっとこういうことを言うんだろうなと、しみじみと感じたというか。
社会の課題解決をするのがビジネスだというのは、前から思っているし、語ってもきましたが、それをこんなに実感できる世界がまだまだあるんだと。だってそもそも週6で働いていて、日曜に教会にいき10時間くらいしか時間がない方もいる中で、週で6時間も自由な時間が増えるって言われたら、自分だったとしてもすごく嬉しくないですか」

1回の洗濯で3,500円。アフリカ特有の洗濯事情とは
今回のアフリカでの事業展開は、そうした立石さんの夢に近づく一歩になると同時に、ビジネスの成長という観点からも理にかなっているといえます。そこには、アフリカ特有ともいえる洗濯事情がありました。

立石さん「洗濯というと、アフリカではいわゆる洗濯代行のサービスしかなく、それがそもそもめちゃめちゃ高いんです。アイロンまでかけてくれるのですが、例えばそれをモザンビークでやろうとすると1キロあたり750円。例えば5人家族で1日に出る洗濯物は5キロくらいなので粗く見積もって大体1回の洗濯に費やすお金は3,500円。しかも返ってくるまでに3〜4日かかるので、日本の価格よりもちょっと高いくらいの設定でもまあまあ人が来るんです。」
たとえば、洗濯機3台と乾燥機3台を置いたとして、日本での月次売上は10〜15万円ほどですが、対してモザンビークでの実際の売り上げは30万円近く。こう考えるとビジネス的にみてもかなりの伸び代があることがわかります。
事業のポテンシャルを最大化させるため、ライフブリーズは地域のサプライヤー企業とタッグを組みながら、優良な日本製の中古ランドリーマシンを修繕してアフリカに届けています。
立石さん「製造月日から15年も経たないぐらいの日本製の良質な中古品を持ってきて安く修理すると、だいたい20年からうまくいけば30年くらい持つといわれています。15年もすれば機械自体の減価償却はほとんど終わっているので、それをアフリカに持っていけば初期コストの回収も早いですし、現地側の負担も少なく始められます」
さらに、事業をフランチャイズとすることで、ある程度誰がやっても回るようなシンプルな事業モデルを構築。そのため、アフリカでフランチャイズ事業を行なうことは、現地での雇用創出や事業を行なう人材の育成にもつながるという効果があります。

立石さん「JICAがやっているABEイニシアチブというアフリカ人に特化した留学プログラムの制度があり、選抜されると学校の授業料全額と、卒業後は半年間のインターンシップを国が助成してくれます。プログラムが終了後はその経験を持ち帰って現地で事業をしたり、日本とつながりながら日本のプロダクトを売ったりするのがゴールになります。ところが、実際帰国して起業した事例はほとんどない状況だそうで。フランチャイズモデルを使えば、現地で店舗を開く際の障壁も少なく、わりと好事例として評価していただいています」
大事なのは語学力より問題を解決する力
ケニア出身で現在日本の大学院に通うエスターさんは、新潟の国際大学の大学院に在籍しながらライフブリーズのインターンとして2025年8月からの1ヶ月間塩尻を拠点に働いていました。

エスターさん「個人的にビジネス全般、特にフランチャイズ事業に興味があり、立石さんと知り合ったのも、2024年10月、日本のフランチャイズ事業についての交流イベントに参加していた時でした。大学院を否定するつもりはないですが、例えば卒業後に大学院で公共政策を教える職に就いたとしてもいずれ退職など、引退のタイミングが絶対にきます。ビジネスはもっと長期的である意味引退というものがありません。そのために、まずはビジネスを学びたいと思い、ライフブリーズで働いています」
セルフィー事業の広報やインターン生への呼び込みとして、2025年はいくつかのカンファレンスに出展。事業の展開に興味がある人がいないか呼びかけたところ、すでに20名以上、国としては十数カ国以上のところから問い合わせがきているといいます。

エスターさん「ケニア、モザンビークのほかにも、マダガスカルが新規立ち上げの段階にあるのと、その他にタンザニアや、ナイジェリア、リベリア、ナミビア、ガーナにも事業に関心がある人たちがいて、具体的にやりとりを進めています」
今後は、そうしたフランチャイズオーナーの候補となる人たちと丁寧に面談を重ねながら、フランチャイズとしての事業基盤の確立と、人材育成、さらなる店舗数の拡大を目指していきます。やるべきことは山積していますが、達成のためには人手が足りていない状況があります。
立石さん「現地で出店する候補者とのやりとりがまずあり、また、実際に出店が決まれば、店舗立ち上げのためのやりとりやプロジェクトの組み立てが必要になります。飛行機や現地滞在期間中の移動手段の手配などもありますし、既存店舗からも機械のメンテナンスで問い合わせがくるので、サプライヤーとつないでエラーの特定をしながらフォローをしていくなどの細かい対応がいろいろと出てきます。これが2から5、10店舗と増えてくると、これらの一連の動きをやるにしても、どんどんやることは増えていきます」
1つの国で新規立ち上げを手伝うとすると、現地調査とオープン時の2回、1週間ずつくらい現地チームに対するサポートが必要。この先5年で30カ国を担当するとなると、年3回、合計12週間程度、アフリカへの出張が発生する見通しです。
立石さん「現地とのコミュニケーションにおいては、英語ができるに越したことはないですが、長い目で見たときには、英語力よりも問題解決能力が高いことの方が重要だと思っています。言語はあくまでもツールなので。日本と比較すると治安はどこも悪いので、現地で活動する場合は危険なことに巻き込まれないように危機管理を徹底しなければなりません。また、文化の違いからコミュニケーションの仕方や時間感覚もそれぞれ異なります。カルチャーの違いを受け入れるとか、一回聞いただけでジャッジしないマインドも必要なんじゃないかなと思います」
国を超えてみんなが支え合い、進化できる環境を
店舗数の加速度的な広がりと事業の成長は、新たな可能性を生みます。まず、会社として見据える成長規模について伺いました。

立石さん「ひとまずアフリカでは54カ国、10万店舗を目標としています。フランチャイズ事業のなかで今世界で一番多い大手のコンビニエンスストアでも8万5千店舗ぐらいだとされているので、これはもしかしたらその数字を超えられるんじゃないかなと思っていて」
その上でのさらなる目標は、54のアフリカ諸国を事業で結んでいくこと。
立石さん「店舗のある国が10カ国、20カ国と増えていくと、じきに国ごとの特色みたいなものが出てくると思っています。例えばモザンビークは事業がスタートした国なので、発祥の場所としての価値も一定出ると思いますし、ケニアではモザンビークと比べて店舗デザインとかもかなり凝っているので、ブランディングがより洗練されたものになっています。そしたらそれを例えばパッケージにして、もしかしたら違う国に売れるかもしれないとか、ウェブサイトを立ち上げるからみんな相乗りして店舗あたり月々5,000円ずつ会費を払うモデルや、洗剤工場をつくってそれを流通させることもできるかもしれません」
フランチャイズとして事業を拡大していくと、他のフランチャイズ店舗の事例も含めて経験やナレッジがたまっていくため、いち個人、いち企業が何かやろうと思った時に出せる何十倍もの速度で出すことができます。
立石さん「国を超えてみんなで支え合ったり、進化できたりする環境をフランチャイズとしてつくっていくことができれば、個人だけで頑張って毎日試行錯誤を繰り返し10店舗を運営するよりも『我々は5,000店舗でそれを回しています』みたいなレベルまで到達することができます。かつ、それがこの事業であれば、そう遠くない未来で達成できる。最終的にアフリカのどの国に行ってもセルフィーがある状態になれば、旅をした時の安心感も含めて、いわゆる本当の意味でのブランディングにもちゃんとつなげていけると思います」

アフリカといっても、国によって言語も宗教も文化もバラバラ。一筋縄ではいかないことも多々あるなか、問われるのは経験よりも事業や事業を通じて叶えられる世界にいかに共感できるか。
事業を通じて成長したい人、そして事業の先に1億人の子どもを笑顔にする世界を一緒に実現していきたい人。そんな未来にワクワクする人、ぜひ連絡をお待ちしています。ライフブリーズでは他では手に入らない、圧倒的な成長や達成感が得られるはずです。
文 岩井 美咲
編集 風音
募集要項
[ 会社名/屋号 ]
株式会社ライフブリーズ
[ 募集職種 ]
①海外事業立ち上げプロジェクトマネージャー
②バックオフィス担当
[ 取り組んでほしい業務 ]
今後、大規模展開を行っていくために、一緒に事業推進を行っていただける仲間を募集しています。まだまだ立ち上がったばかりのベンチャーのため、各種プロジェクトマネジメントを担いながら、多様な業務範囲に前向きに取り組める方を募集します。
◎アフリカ現地チームとの連携や現地での立ち上げサポート
◎プロジェクト推進・マニュアル作成
◎採用・広報・運営サポート など
[ 雇用形態 ]
正社員
[ 給与 ]
年収想定:350万円~500万円
※経験に応じて応相談
[ 勤務地 ]
長野県塩尻市大門桔梗ヶ原1079-66
[ 勤務時間 ]
8:30~17:30(休憩:1時間)
[ 休日休暇 ]
年間休日120日
[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]
社会保険完備(雇用・労災・健康・厚生年金)
※各種諸条件については立ち上がったばかりのため整備中です。ご入社いただく方と相談しながら決定していきます。
[ 応募要件・求める人材像 ]
・英語日常会話レベル
・海外事業の立ち上げにチャレンジしたい方
・ベンチャーマインドを持ち幅広い業務に前向きに挑戦できる方
※経験は不問・新卒も応募可能です
[ 選考プロセス ]
書類選考
↓
面接1~2回(リモート、現地)
↓
内定
※選考期間は約2週間程度を想定しています
※取得した個人情報は採用目的以外には使用しません。
※不採用理由についての問い合わせにはお答えできかねます。
[ その他 ]
こちらもご覧ください。
企業HP
コインランドリー事業、ケニアに拡大 塩尻市の立石コーポレーション子会社(信濃毎日新聞デジタル,2025.9.17)
個別相談も可能です

応募前に質問や確認したいことがある方は個別相談を受け付けます。
◎企業担当者と応募前に事前に説明や相談を行うことができます。
どんな会社なのか、実際の働き方はどうなるかなど、気になる点をざっくばらんにお話ししましょう。