「”食”に携わる求人、ということで、間違いはないです。
ただ、「これ美味しかったです」「ありがとうございます」だけではない、
一歩踏み込んだ会話ができる。
地域をもっと身近にする、まちの居場所を守る仕事です。」
飯綱町で廃校となった小学校を改修した複合施設「いいづなコネクトEAST」「いいづなコネクトWEST」の運営を中心に、ふるさと納税やワーケーションなど、様々なまちづくりに取り組む株式会社カンマッセいいづな。
お話を伺ったのは、事業企画部で組織づくりや各方面との連携を担う吉川剛史さん(写真右)と、いいづなコネクトWEST校長として施設管理、またとちのき食堂の店長を務める加藤貴彰さん(写真左)です。
今回の求人では、いいづなコネクトWESTにある「とちのき食堂」と「給食室」で調理のサポートをしながら飲食部門を管理し、加藤さんと共に施設全体の活用を考える、人をつなぎ、場を活かし合える仲間を探しています。
まちの“いつも”をおもしろくする会社で、つながりを育む食堂
長野県の北信地域にある飯綱町(いいづなまち)は、人口10,000人ほどが暮らす、りんごの里。株式会社カンマッセいいづなは、2019年5月にできたまちづくりの会社です。4校あった小学校が2校に統合し、廃校となってしまった旧三水第二小学校、旧牟礼西小学校を利活用するため、飯綱町と地元の人たち、コンサルティング会社や地元企業が一緒になって考え、持続的な事業を展開するために会社を設立しました。
吉川さん「代表は地元工務店の社長でもあって、自由に、社員一人ひとりに楽しく働いてほしいという気持ちがベースにある人です。現在社員は10人、パートアルバイトは20人ほどの組織で、基本的には飯綱町からの委託事業を行っています。」
社名の「カンマッセ」は北信地域の方言で、“かき混ぜる”の意味。最近は、町内の子育て支援施設の2階にできたワークスペース「i(アイ)ワーク」の運営がはじまったところだといいます。ここはコワーキングとセミナールーム、託児や仕事の相談窓口などが揃い、地域のお母さんたちが働いたり休んだりできる場所です。
加藤さん「これだけ飯綱町と連携して事業ができているという意味では唯一無二というか、行政側もきちんと動いてくれるので、みんなで暮らしをおもしろくしているという雰囲気はありますね。いいづなコネクトという施設も、交流を通じて事業を生み出していく、いいつながりがどんどん生まれる場を目指しています。」
「今はもう、空いている部屋を探す方が大変」というくらい、たくさんの機能を持ついいづなコネクトWEST。校舎の1階には一般向けの食堂「とちのき食堂」と、会議室、コインランドリー、コミュニティラウンジ、フリースクールなどが並びます。2階は4つの貸しオフィスと、コワーキングスペースの「自習室」。眺めのいい3階は、元教室に畳を入れた宿泊スペースがあり、合宿などの受け入れを行なっています。
その他、別棟と屋外には、入所者向けの飲食店「給食室」と、本格的な設備が揃うスポーツジム、スタジオ、シャワー室。人工芝を敷いたグラウンドと体育館。貸しオフィスは満室で、町内のふるさと納税事務局や整体師、県内でジュエリーの塗料を開発製造する企業や、県外が本社のWeb戦略会社などが入っているといいます。
加藤さん「一度廃校になった学校ですが、現在はフリースクールの子どもたちを入れて常に30〜40人くらいの人が過ごすようになりました。コインランドリーや食堂、スポーツジムの利用者は、ほとんどが地元の人で、一緒に使えているというのも嬉しいですね。近隣の方に、学校にあかりが灯っているだけでほっとすると言われたこともあります。フリースクールが入ったので、子どもの声が聞こえて嬉しい、とも。」
2021年4月からの来場数は3万3千人を越え、そのうち1/3が「とちのき食堂」に訪れているそう。
吉川さん「飲食のために訪れるって、ある種わかりやすさでもあって、やっぱり“食”がコネクトの中核になっていると感じます。」
加藤さん「提供しているのはラーメンや丼もの、餃子とか。夜はお酒が飲めて、老若男女問わず、地元の人が7〜8割です。“この料理がすごく美味しいからきて!”というよりは、過ごしやすい雰囲気をつくって、“行ったらあの人がいる”っていう、地域の居場所を兼ねています。いい意味で距離感の近い店ですね。」
施設内にあるもうひとつの飲食「給食室」は、施設に入居している企業のスタッフやフリースクールの子どもたちのための食堂。ひとつの場所に集まって同じ時を過ごし、みんなが同じご飯を食べるため、グッと距離が近くなります。メニューは、栄養バランスが考えられた日替わり定食で、まさに給食のよう。管理栄養士の資格を持つ地元のパートさんが献立を考え、調理を行います。
吉川さん「各企業さんの入所経緯はバラバラですが、今はみんなが知り合いで仲間、みたいになっている。あちこちでコラボの打ち合わせが聞こえてきたり、「給食室」では大人たちが話す横で子どもたちが昼食をとっていたり。いい広がり方をしているな、と感じます。」
加藤さん「そうして食に携わる仕事、というのは間違いないんですが、食の美味しさだけを届ける仕事ではない、というところですね。ざっくり僕の1週間をいうと、週末はとちのき食堂を見ながら施設の業務があり、平日に休みを取りながら、打ち合わせをしたり、イベントの企画を進めたりしています。グリーンシーズンはイベントや合宿が入るので、季節によっても違います。飲食だけ、施設管理だけって、マンネリを感じる暇はありません(笑)。」
加藤さん「商品を提案したり、子どもたちがワークショップでつくったものを販売したり、屋外でミニサッカーをやって、キッチンカーが並ぶこともあります。イベント内容によって、スポーツ系のものであればスポーツジムを運営している企業と一緒に開催したり、料理系であればとちのき食堂でご一緒したり。会社の理念に沿っていて、まちのためになることならば、わりと自由に組み立てる余地があります。」
ただ、そうしたイベントができるのも日々の小さな仕事があるからこそ。カンマッセいいづなでは、イベントや発信を通じて施設を盛り上げることを大前提に、引き続き地元の人に使ってもらうことを強く意識しています。
加藤さん「今は自分たちが運営を担っていますが、廃校になってからずっと、地元の人が意見を出して計画を立て、決定を重ねてきた経緯があります。だから本当に、施設が地元に受け入れられていているんです。22時までグラウンドに明かりがついていても、多少声が出て賑わっていても、苦情はほぼありません。これからもそうした関係は大切にしたいし、地元にひらいた施設でありたいと考えています。」
会社の設立から約3年。さまざまな事業が生まれるカンマッセいいづなでは、みんなで意見を出し合い、改めてビジョンを言語化しています。そこで出てきたのが「まちの“いつも”をおもしろく」という言葉でした。
暮らしと向き合い、好きになれるまちをつくる
吉川さんも加藤さんも、出身は町外。吉川さんが飯綱町を知ったのはカンマッセいいづながきっかけで、自身のやりたいことが仕事を通じてかないそうだと感じ、移住してきました。
吉川さん「私は長野県の南信、飯田市がふるさとです。上京して仕事を頑張ろうという時期があって、12年ほど埼玉県に住んでいました。スーツが戦闘服で、ビジネスの世界にずっといた感じですね。でも、年収が上がっても幸せが待っているわけではなく、自信がつくわけでもなく。むしろ不安が募って疲れてしまったんです。そうして途方にくれていたときに出会ったのが社長の土倉と、この場所でした。」
「まちを変えたいという熱い思いがあったかと言われると、初めは全くなかった」と、吉川さん。ただ、この仕事を通じて自分の暮らすまちを好きになりたい、という思いは、当初から持ち続けています。
吉川さん「埼玉に住んでいたときは職場が東京だったので、出稼ぎにいくような感覚があって、とにかく人のために頑張るしか、自分の幸せは見出せないと思い込んでいました。飯綱町は、仕事を頑張るとプライベートも良くなるような、知り合いが増えそうな環境が僕にとってのおもしろさ。地域にネットワークがほしかったんです。」
もうひとつ、吉川さん個人の興味は、組織づくりそのものにもあるそう。
吉川さん「仕組みやルールだけで組織をなんとかしようとすると、感情や気持ちは、ないがしろにされていくんですよね。これって違うんじゃないかなと思っていて。今は、そうではない関わり方、個々がやりたいことをやりながら活かしあえる組織を模索中です。」
加藤さん「私は出身が千葉県で、長野県に移住したのは10年前です。仕事がきっかけで、今も住んでいる高山村に単身移住しました。飯綱町まで車で30〜40分くらいの場所ですね。ペンションや飲食店など手広く経営する会社に勤めていて、カンマッセいいづなに転職をする前も飲食や宿泊などといった業界で働いていました。村の観光協会に所属していたこともあります。」
その後、結婚を機に自分の暮らしを考えたという加藤さん。
加藤さん「学びの多い職場ではあったんですが、とにかく忙しくて。吉川さん同様、もっと村に関わりながら、自分のやりたいことを考えたいと思い仕事をやめました。ただ、そのまま高山村でなにかを興すには、経験も仲間も足りなかったんですね。もっと学ぶ必要を感じていたとき、たまたまカンマッセの求人を見つけました。」
飯綱町が抱えている課題は、どの地域にも通ずると感じた加藤さん。そうした課題に仕事として取り組みながら、自分も学び成長できる環境が整っているところにおもしろさを感じたといいます。
加藤さん「面接で自分の思いまで踏み込めたことも決め手になりました。当時、もう廃校利活用のコンセプトやイメージは決まっていましたが、調理や宿泊、スポーツなど、自分の取り組みたいキーワードがあったことも大きかったと思います。」
そして校長の加藤さんが、自分の興味と関わる人たち、町全体や施設のことを考えたとき、いいづなコネクトWESTとして次に取り組みたいのが“観光”です。
加藤さん「一見すると“地域の居場所”と相反する言葉に見えるかもしれませんし、観光という言い方が正しいのかはまだわかりません。でも、せっかくこれだけ施設を活用できている、ということも含め、もっと町外に発信をする必要があると考えています。」
非日常と日常の間にある観光をつくりたい
飯綱町の周辺には、温泉で有名な高山村、栗や歴史ある町並みが魅力の小布施町、野尻湖がある信濃町や戸隠村など、有名な観光地が多数あります。
加藤さん「飯綱町では、多くの人が“ここは何もない、りんごがあるだけ”って言うんです。でもその“何もない”と思っていることこそ可能性だと思っていて。考える余地、組み合わせて生まれる可能性がたくさんあると考えています。」
吉川さん「飯綱町からワーケーションの施策を検討してほしいという依頼があって、旅客業の免許を取る話も進んでいます。ここで観光という言葉が出てくるとは思っていなかったんですが、話しているうちに、さまざまな波及効果があるのではと考えはじめました。」
加藤さん「県内に魅力的な市町村が多いのは事実なので、そこに行ってもらっていいんです。ただ、飯綱町もその中の選択肢のひとつとして、きちんと持続できる形で参入していきたい。宿泊やスポーツ、りんご狩りなどの体験を入り口に、いい循環がつくれるのではないかと構想しています。」
特に、団体の合宿や研修を多く受け入れるいいづなコネクトWESTでは、内容に合わせて地元の人とつながる体験を組み立てられるのが強みです。
加藤さん「例えばミニサッカーの合宿なら、どこか半日は地元の子どもたちと一緒にレクリエーションをしようとか、りんご農家さんで一緒にワークショップやろうとか、イベントとして地元との交流が生み出せます。その思い出を持って帰った合宿の子たちが、今度は親と一緒に飯綱町に来るような展開が期待できるのではないかと考えています。」
吉川さん「ワーケーション事業も、体験や交流を念頭に関わりたいなと思っています。普通の観光では出会えない人と話せるとか、そういうことが意外と求められているというのは、何度かワーケーションの体験をしたときに感じました。ここでいうと、とちのき食堂がまさにそういう場でありたいと考えているので、ここでも飲食というカテゴリが生きてくるだろうな、と。」
ここに行ってください、これを見てください、ではなく、人とつながってリピーターになるような観光。そうして訪れた人が飯綱町を好きになり、交流・関係人口、さらに移住へつながっていくと、カンマッセの目指す「まちの”いつも”が楽しい」状態に近づいていくのではないかと期待しています。
加藤さん「会社がいろんなことやっているから、何かしら連動できるのはおもしろいですよね。今回の求人は飲食が中心ですが、業務範囲にかかわらず一緒にやっていきたいという思いが強いです。飲食であったり、施設活用だったりに興味があるのは大前提。加えて“こんなことがしてみたい”という思いや、アイデアがある人が来てくれるとすごく嬉しいです。」
大切なのは、困ったときに「助けて」が言えること
先述の通り、とちのき食堂と給食室は、いいづなコネクトWESTにとって「ここがあるから他もできる」という、大切な役割を持つ場所です。
地元の人とつながり、テナント企業とのつながり、今後は地域外から訪れる観光客ともつながっていく。ここに行けばあの人がいる、といった安心感を地元の人に持ってもらうためにも、コミュニケーションを円滑にとれるスキルは必須といえそうです。また、パートの人が休みの日はヘルプで調理に入るので、ある程度飲食経験があることも望まれます。「ただ、その比重は幅があっていい」と、加藤さん。
加藤さん「こだわりの料理人やプロフェッショナルで頑固一徹、みたいな感じだとちょっと困りますが、飲食を中心に場に関与したいという人でも、飲食は2割くらいで施設活用に8割の興味があるという人でも、ある程度は合わせられるかなと思います。何より自分のやりたいことがあるというのが大事ですね。」
個々が責任を持ち、おもしろさを求めて働いているからこそ、自分の興味が当てはまれば楽しいし、それがないと難しい。働く上でも、まずは自分で自分を満たすという意識を持って、良い循環を生み出そうとしています。
吉川さん「飯綱町って多くの人がいるわけではないので、イベントを打っても人が集まるかなんてわからないんですよ、正直なところ。だから、人の集まらないイベントは失敗としてしまうと、イベントまでの準備過程が辛く、楽しくなくなってしまう。そうではなくて、まずは自分たちが楽しいと思うことをやる。最悪誰も来なくても楽しい、でも来てくれたらもっと楽しい。楽しむエネルギーで正解を探しながら動いてもらった方が、周りの僕らもパワーが出せるなと思います。」
加藤さん「あとは困ったら助けて、が言えること。社内の人材だけでも本当に多様なので、お互いのことがわかるとそれだけ可能性も広がると思っていて。なるべくすれ違いをなくして風通しよく、マイナスもプラスも言い合える環境をつくっていきたいです。」
加藤さん曰く、やりたいことも、やらなければならないことも山のようにある日常。コロナ禍の飲食は、どう舵取りをしていくのか常に課題がつきまといますが、そこだけで乗り越えなくていいのがカンマッセいいづなのいいところでもあります。
生み出しているのは、まちの人も、自分たちも、「最近このまちおもしろいよね」「変わってきているよね」という日常の実感が得られる事業たち。柔軟さと難しさを併せ持ち、さまざまなモノ・コト・ヒトをつなぐ食堂が、あなたの“やってみたい”を待っています。
文 間藤まりの
※ 撮影のため、取材時はマスクを外していただきました。
募集要項
[ 会社名/屋号 ]
株式会社カンマッセいいづな
[ 募集職種 ]
飲食事業マネージャー候補
[ 取り組んでほしい業務 ]
「とちのき食堂」「とちのき給食室」をより多くのお客様が来ていただける場所にすることを中心に、施設に付随する宿泊施設とのコラボレーションなども含め、いいづなコネクトWEST施設全体の運営・企画を一緒に考えて動いていただきます。
[ 雇用形態 ]
正社員(試用期間3か月)
[ 給与 ]
月給200,000円~300,000円(想定年収2,400,000円~3,600,000円)
※経験・能力を考慮して決定します
※25時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
[ 勤務地 ]
いいづなコネクトWEST(旧牟礼西小学校)
長野県上水内郡飯綱町川上1535
[ 勤務時間 ]
◎シフト制(1か月の変形労働時間制)
◎実働8時間 休憩1時間
※土日祝日、夜の勤務も可能な方
[ 休日休暇 ]
◎年間休日120日以上
・年末年始休暇
・夏季休暇
・有給休暇
[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]
■昇給年1回
■決算賞与(業績により支給)
■社内飲食店の社割
■雇用保険
■厚生年金
■労災保険
■健康保険
■交通費支給あり
■服装自由
[ 応募要件・求める人材像 ]
<必須要件>
ソーシャルビジネスに関心がある方
まちづくりのために現場で一緒に汗を流せる方
<歓迎要件>
飲食店業務経験
ベンチャー企業での勤務経験
[ 選考プロセス ]
書類選考
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面接2回(現地)
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内定
※選考期間は約3週間程度を想定しています
※取得した個人情報は採用目的以外には使用しません。
※不採用理由についての問い合わせにはお答えできかねます。
[ その他 ]
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