「“この指止まれ”を繰り返している感じです。
反応がなかったらいち早く修正するし、うまくいったら“なぜだろう”と分析してみる。

きっと僕らができることって、自分と仲間が『こんな未来が訪れたら幸せ!』って妄想と信念と覚悟を持って取り組むことくらいだと思うんです。」

お話を伺ったのは、株式会社CASE代表取締役、ギャラリー付きのシェアアトリエ「HATCH」の代表、総務省が任命する地域力創造アドバイザーなど、多くの顔を持つ近藤威志さん。

今回の求人は、長野電鉄湯田中駅から徒歩2〜3分の湯田中温泉街にできる「関係案内所」の施設運営と地域の事業づくりを行う人。「人・暮らし・地域・コミュニティ」をテーマに、空き家活用、地域の事業再生を手がける異色の経営者、近藤威志さんに話を聞きました。

アドバイザーとしてではなく、いちプレイヤーとして地域に入る

近藤さんは、地域コミュニティの再構築を軸に、空き家・空き地の利活用を行う「地域100LDK構想」を提唱しています。

空き家を、地元の人、外からやってくる関係人口・交流人口と呼ばれる人、みんなが集える地域のリビングとしてひらく。そこを起点にまち全体を家として捉え、「ここは寝室」「ここは宿泊」「ここはお風呂」「ここは書斎」など、機能を点在させて、ちいき全体で暮らしていく100LDK構想。多世代多文化型のまちづくりを目指す根底には、近藤さんの幼少期にあった団地での暮らしが影響しています。

近藤さん「育ったのは、74世帯が家族ぐるみで付き合いをするような団地でした。近所のおっちゃんおばちゃんに怒られ、お姉ちゃんたちとままごとをして、お兄ちゃんたちとサッカーボールを蹴って、当たり前のように小さい子たちの面倒を見る。子どもの頃の憧れは、サッカー上手な幼馴染のお父さん。僕にとって、文化や世代を越えて芯まで関われるような地域コミュニティが、原風景なんです。」

世界中にリビングがあって全部が拡張家族みたいになる。「そうしたら人類みな兄弟じゃん、世界平和じゃん、って壮大なことを考えています」と笑う近藤さん

現在は自治体単位で8つ、自主事業で15の地域と関わり、毎月それらの地域と行き来をしている近藤さん。地域との関係は、いつも自分の足で歩き、人の声を聞きながら、事業の”種”を見つけるところからはじまります。

近藤さん「僕が関わる”地域”って、ほとんど自分の寝泊まりする家があって、毎月一回は必ず足を運ぶ場所なんですね。自治会も全部加入しているし、氏子神社の祭りに参加する地域もあります。人口が少ない地域であればあるほど、そうした活動のなかからいろんな声が聞こえてくるんです。」

まずは自分が率先してやってみる。この日は山ノ内町で、地域の人と一緒に独居老人宅の雪おろしをした近藤さん(写真中央左)。作業の合間の雑談からも地域の現場が見えてくるのだとか

特に、空き家率の高い地域は高齢化率も高く、合わせて事業承継に課題を抱えていることが多い。「空き家」「事業承継」の2点は、いま個人的に最も関心の高い2つのテーマで、どちらも激増する社会課題に対して、事業の力で根本から解決していきたいと本気で考えている問題です。

近藤さん「例えば空き家って、倒壊しはじめると近隣に影響を及ぼすし、手をかけないと1年でも崩れはじめるので、結構危険だなと思っています。 “価値がないから”ってとりあえず放置されていたり、保険に入っていなかったり。空いている状態がどれだけリスクかというのが啓蒙されていないと思うんですよね。」

出会った空き家で、救えそうなイメージの湧くものは、率先して借りたり購入したりしながら利活用をしている近藤さん。直近はそうした空き家を使い、自社の事業で「全国15地域の空き家ではじめる、お米食べ放題付きシェアハウス」を立ち上げたところです。これは月の家賃30,000円のシェアハウスで、ベーシックインカムならぬベーシックイン米(こめ)が付いてくるというもの。地域に人を呼び込むための仕掛けづくりだといいます。

近藤さん「“安いから住みたい”という人ではなく、地域でチャレンジしたい住人を募集する予定です。希望があれば独立支援も行うし、魅力的な事業や人材へは出資して子会社社長として活躍していくという道があってもいいな、とか。いろんなチャレンジを促せたらと考えています。」

さらにこのシェアハウスは、農業のしくみを変えることに通じているのだとか。

近藤さん「農業は儲からないって、よく言うじゃないですか。米農家って、一反(いったん)あたりの価格が低いから、効率化するか大規模化するかしか選択肢がないんですね。僕らは昨年度、棚田を3枚借りたんです。“シェア棚田とシェア別荘だぜ!”って世の中に出してみたら、月10,000円で借りてくれる人が30人くらい集まるわけですよ。これはコミュニティサポーテッドアグリカルチャーという形で昇華できるなと思って。」

米をつくって米を売るのではなく、会費や家賃という形でお金を生み出す。コミュニティが間に入ることによって、集まる人が農家を支える形ができあがります。農家は収入が確定した状態で農業をはじめられるし、人手の確保にもつながる可能性が出てきます。

近藤さん「一次産業で問題となる天変地異や天候不順による農作物の出来不出来は、コミュニティでクッションしていきます。みんなで分かち合い、リスクを取るという形ができれば、農業のあり方そのものも変えられるんじゃないかと思います。」

地域にある“ブラックボックス”は空き家、事業承継だけではない。飛び込んでみて、地域おこし協力隊の採用方法や進路、農家が取り組む6次産業化、起業創業など、様々な課題が見えてきたという近藤さん

近藤さん「どんなこともそうだと思うんですが、人間ってみんなオールマイティーじゃないですよね。日本人の人柄なのか、“全部自分たちでやらなきゃ”みたいな思考に囚われている人が多いなと感じていて。得意不得意と役割分担とパートナーシップ。一緒にやれば、相当なことが解決していくと思います。」

近藤さんの役割は、地域に圧倒的に足りない“出口=キャッシュポイント”をつくること。得意だという事業構想、営業の原点は、24歳のときに携わったアパレル会社の創業期にあります。

違和感から飛び込んだ地域と、数に感じる可能性

いわゆる就職氷河期だったという大学卒業の時期を経て、近藤さんは仲間とNPO法人を立ち上げ、学生の就活支援をしていました。

近藤さん「そのうちにNPOの仲間が独立してアパレルの企画会社を立ち上げることになって、僕も参画しました。“この会社、どうして行くんだっけ?”って、気づいたら毎日200件近い営業電話をかけていましたね。会社が大きくなれば、NPOの仲間がもっと活躍する場をつくれる。夢があったから必死でした。」

結果、会社は1年で年商2億円の規模に成長しましたが、近藤さんは夢半ばで会社を離れることになります。その後、自分の会社をつくって渋谷でエージェントをしたり、浅草でアートプロジェクトを始動したり。結果として、2001年以降、8つの法人と40以上もの新規事業の立ち上げに携わったといいます。

近藤さん「極端な性格なので、仕事に関してはいつもがむしゃらで、怖さも何もないんです。動けば何かしらの結果が出る。人の想いに寄り添い、人と人、人と場所をつなぐっていうことを、起業したときから今までずっと続けています。」

いわゆる「地域」というものに踏み込んだのは、2013年。地元の神奈川県横須賀市が人口流出超過全国ワースト1になり、それに伴って空き家の課題が全国のニュースになっていた年でした。行政発表にあった、横須賀市内でも一番空き家率が高い地区は18.5%だったのだとか。

近藤さん「地元横須賀にそんな地区があるのも知らなかったので歩いてみたら、“これ、実質半分近くが空き家では?”という体感があったんです。発表は実態を伴っていないんじゃないかと思って、試しにその地域で空き家を借りてみたんですね。通い始めて3ヶ月で、空き家バンクに載らない家が4軒集まって、やっぱりなって。」

東京から小1時間の横須賀市にすらこれだけの空き家があるとすれば、日本中でとんでもないことが起きていると感じた近藤さん。最初は、“お困りの空き家があったらひきうけまっせ”くらいの気持ちで全国を周りはじめたといいます。

近藤さん「その辺りから、都市と地域を行き来するようになりました。僕のなかで両者はそんなに違わないし、たまたま取り組んでいるのがその場所、という感覚です。ただやっぱり、絶対数の違いはある。人が多いと価値観が多様なので次々ユニークなものが生まれるけど、人の顔は埋もれて見えなくなる。少ないと多様性は減るけど、互いに顔が見えて、リスペクトしあっているなと感じますね。」

地域の可能性は、そうした違いのなかにあると近藤さんは考えています。例えば、東京ではもう当たり前すぎて山ほどあるコーヒースタンド。ひとつもない地域はまだまだ全国にあります。そうすると、すでに世の中に存在するものの真似であっても、場所を変えて唯一無二な人やサービスになれる可能性が出てくる。それだけで「ちょっとユニークなこと」として、まちが活性化するきっかけができます。もうひとつの可能性は、コストの低さです。

近藤さん「なぜか日本の起業家たちは都市部に行きたがるんだけど、事業って収支のバランスなので、圧倒的に支出を抑えられれば勝てる可能性は上がるはずなんですよ。その点、地域は強い。ただどうしても、顔の見える関係性のなかでは“やりがい”とか、“喜んでもらえる姿”に関心が行きがちなんです。課題があるとすれば、それをビジネスとして成立させる意識があるか、というところですね。」

求人の舞台となる山ノ内町、湯田中温泉にある「かえで通り」。一時期は多くの観光客で賑わい、栄えた歴史のある場所

地域の事業に必須なのは「人と積極的に関わりたい」気持ち

地域力創造アドバイザーとして山ノ内町に入り、さまざまなことを画策中といいますが、「まずは自分で物件を掘り起こして、拠点づくりをはじめる!」という場所なのだそう。近藤さんが代表を務める株式会社CASEで、正社員の雇用を想定しています。

商店街に面した店舗スペースと、2階から奥にかけては滞在できる部屋が連なる温泉付きの16LDK

いわゆる「宿泊施設」や「旅館」とはせず、住まう人も長期滞在者も、短期滞在者も混在する場を考えています。

近藤さん「これだけいろんな地域で暮らしていると、時間貸しの料金を払っているのか、1泊宿泊の料払っているのか、それとも1ヶ月の賃料を払っているのか、わからなくなってくるんですよ(笑)。この概念は無意味じゃないかなって思うのだけど、日本の制度ではどうしても定義しないとできないから、どっちも取って使う人に選んでもらえばいいかなと思っています。」

主に近藤さんの呼びかけで、すでに人の出入りがあるこの建物。今は、1ヶ月に10人以上がやってきては滞在し、物件のDIYや周囲の散策、フリーペーパーづくりなど、何かしらの作業をして帰っていきます。

近藤さん「それだけでも場のポテンシャルがあるなと思います。まちの人からは“一体いつ何ができるの?“って言われるんですけど、“どうしましょう?“って、すっとぼけることにしてて。“こんなことしたらいいんじゃない?“とか“こんなことしてみたかったの“とか。お喋りから出てくるアイデアは、全部要素として取り込むつもりです。」

社名のCASEは、いろいろな想いや物事を持ち込む”器”と、生まれる様々な”事例”から付けられた名前。この場所も器と事例のひとつで、地域と人の関係性を紡いでいくのだそう

事業づくりという視点でも、山ノ内町はめちゃくちゃ地域資源が豊富だという近藤さん。

近藤さん「地域の商品を扱う新しい商社をつくりましょうという働きかけは、山ノ内を含む全国あちこちで行っています。六次産業化とかも全部そうで、商品を産む後押しはするんだけど、出口がないんですよね。東京や京都に構える自社拠点と連携しながら、在庫リスク、商品管理、卸売り、小売など、課題を抱える商品は、全部この、CASEの子会社としてあらたにつくる地域商社で巻き取りたいと思っています。将来的には各地の商社をつないで、CASEでホールディングス化していけたら、と。」

各地の商社が育てば、幹部候補、リーダー候補は充分な収入を得る目処がつきます。商品を卸している地元企業にも利益が生まれるので、地域に雇用が生まれ、法人税収が増えるきっかけにもなり得る。いい循環を引き起こせるはずだと、近藤さんは構想を描いています。

近藤さん「今回の求人では、施設運営と地域の事業づくりを行う人を探しています。施設というのは、店舗と住まい。店舗についてはシェアキッチンやアンテナショップのようなものを考えていて、住まいはコミュニティづくりみたいなことかなと。もちろんご自身も住んでもらってOKです。そうして拠点に従事しながら、地域資源を活かした事業づくり、商社づくりに取り組んでもらいたいと考えています。」

探しているのは、何より人と関わるのが好きな人。経験や実績は関係なく、今、手を動かせる人を求めています。地域に関わる仕事は、必ずいいことも悪いことも両方が起きる、と近藤さんはいいます。

近藤さん「組織としても変化のスピードが尋常じゃないし、教育体制がしっかり整っているわけでもない。日々いろんなことが起きるから、良いことも悪いことも変化も含めて一緒にそれらを楽しみながらサーフしていける、ポジティブな感覚を持っている人と仕事がしたいです。」

​​CASEが大切にしているのは、自らの「想いを持って」「知恵を絞って」「行動する」こと。それを高速に大量に回すこと。近藤さんは、日頃からなるべくフラットに物事を受け止め、地域の人と一緒になって取り組む事業を心がけています。

例えば、株式会社CASEを設立するきっかけになった、東京都渋谷区広尾のレストラン「CASE(ケース)」。近藤さんが友人らとともにリニューアルオープンさせた、共同オーナー&コミュニティ型フーディングレストランです。

きっかけは、近藤さんの友人であるその店のオーナーシェフが投稿したSNSの記事。多くの常連客に愛されつつも、ひとりでお店を続ける難しさを感じて店を閉めようとしていたシェフの悩みを聞き、思いを巡らせました。

近藤さん「例えばひと口10万円で”広尾のど真ん中に自分の店がある”って言えるとしたら、出資者が集まるんじゃないかなと考えました。それを自分のSNSで投げかけてみたら、すごく反応があって。想定していた資金が、2日で集まっちゃったんです。」

こうして比較的少額の出資で100人ほどのオーナーを募集し、アイデアを出し合いながら経営をしていくというスタイルで、集まった出資金は、調理設備や内装などの改修費用に充て、シェフが料理に専念できる環境を整えました。さらに別途オーナー限定のイベントを開き、今までお店を愛してくれていた常連客や、新しく共同オーナーとなった人たちが有機的な関係を育めるきっかけづくりをしているそう。

近藤さん「ここで起きたことって、飲食店でも小売店でも、個人商店が地域の常連によって支えられているという構図だな、と気づいたんです。今までお店が紡いできたストーリーに、新しく共同オーナーという名の常連が加わり、みんなでお店づくりをしている。よそものが突然やってきて、好き勝手にやらせてほしい訳じゃないです、ということ。これって地域も同じで、これまで紡いできたストーリーや歴史、物語がありますよね。僕らは縁あってその担い手になるけど、また次の世代に受け渡していく。たまたまその合間の物語を描かせていただいているだけで、連続性をもったものの一部だという意識を持つようにしています。」

業務委託、プロボノ、副業や兼業。今回の求人を通じて、さらに関わる人の輪が広がることにも期待を寄せる近藤さん。

近藤さん「日本中にプロジェクトがあるので、取り入れてコミュニティビルディングしていく、みたいなことは、きっとオンラインでもできるじゃないですか。企画が得意な人もいるだろうし。いろんなケースを、山ノ内町に持ち込みたいと思います。」

山間の温泉街から、地域にも全国にもつながる関係案内所。思いを持って長距離の全力疾走に挑むような、大きなやりがいとチャンスが待っています。

文 間藤まりの

※ 撮影のため、取材時はマスクを外していただきました。

募集要項

[ 会社名/屋号 ]

株式会社CASE

[ 募集職種 ]

(1)地域コーディネーター
(2)コミュニティビルダー

[ 取り組んでほしい業務 ]

関係案内所支配人(シェアハウス施設管理・飲食物販店舗管理)として、地域に飛び込み、地域と人を繋ぐ関係案内人として、コミュニティビルディング・空き家空き店舗活用・地域コミュニティ活性化等に携わって頂きます。

[ 雇用形態 ]

正社員・業務委託・副業兼業・プロボノなど、いずれの方法でも形式は問わず、一緒に目指す理想の世界を共有でき、実現可能性を高められる方法であればかまいません。時間軸の変化により、関係性を変化させる事も可能です。

[ 給与 ]

年俸制350万円~(実績により応相談)
その他柔軟に相談に応じます

[ 勤務地 ]

長野県下高井郡山ノ内町平穏

[ 勤務時間 ]

フルフレックス(自ら決め、自ら行動して頂くことを基本とします)

[ 休日休暇 ]

プロジェクトや関わり方により応相談

[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]

・温泉付き・お米食べ放題付きの社宅(シェアハウス)あり
・事業に掛かる経費
・健康保険
・雇用保険
・労災保険
・厚生年金

[ 応募要件・求める人材像 ]

積極的に人と関わることができるおせっかいな人
想いを込めて・知恵を絞って・行動できる人
課題や困難を楽しみながら仲間と一緒にサーフできる人

[ 選考プロセス ]

書類選考

面接2回(基本的にリモート、場合によっては現地)

内定

[ その他 ]

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■FINDERSインタビュー

■うちの社長ってなんで空き家すぐ借りてくるの?入社して15日の社員が鞄持ちしてわかったこと

■ひとがひととして生きられるために、CASEが地域で取り組むこと。

■レストラン復活ストーリー

■NHK地域づくりアーカイブス