長野県の仕事を「探す」から「出会う」へ。

勤務時間や給与など条件にマッチする仕事を探す方法もあるけれど、求職者が経営者やはたらく人たちのピュアな情熱や思いに共感し、自然と出会うような求人や採用の在り方があってもいいじゃないか。そして、それを長野県で実現できないだろうか。長野県に特化し、共感でつながる求人メディア「ながの人事室」のコピーにはそんな投げかけが込められています。

運営するのは“地域の人事部”というコンセプトで地域の人材課題を多様な人や組織と協働しながら解決してきた「NPO法人MEGURU(以下、MEGURU)」。2022年2月のスタートから1年以上が経過した「ながの人事室」で、今回新たに社会人インターンを募集すると聞いて、「MEGURU」代表理事の横山暁一さんと、「ながの人事室」の編集長である増村江利子さんにお話を伺いました。

驚くべき採用率の秘訣

初年度で掲載された24本の記事のうち、採用まで至っているのは計7件(その他、1件は現在選考期間中)で、専用ニュースレターへの登録者は約250名(2023年3月末時点)。「求人メディアとして、成果が形となって現れるには長い道のりとなるだろうと覚悟していました」という割に、初年度から着実に結果が出てきているところをみると、媒体としての力が徐々に醸成できつつあることがわかります。

「ながの人事室」を運営する「NPO法人MEGURU」代表理事の横山暁一さん

横山さん「『ながの人事室』の特徴の一つは、応募してきている方々の熱量が全体的に高いという点です。いろいろと検討しているなかの候補地の一つとして応募してきたというより、もともと長野県に縁があるという人や、長野県に住みたいとか関わりたいという人たちが申し込むパターンがほとんどですね。志望動機書などもしっかりと書いてくださる方が多いんです。」

その熱量の高さからなのか、驚くべきは、応募数に対しての内定率。なかには、掲載企業が求めていた人物像にぴったり合致する人から申し込みがあり、そのまま採用に至ったケースもあるといいます。求人を掲載する企業からの反応について伺いました。

木曽に新たにオープンした「木曽おもちゃ美術館」の求人では、木曽の魅力と地域の新たなポテンシャルを広げるオープニングスタッフの募集に全国から総勢15名を超える応募者があった

横山さん「立ち上げたばかりの求人メディアであることもあり、掲載直後から応募がすぐにこないかもしれないことは冒頭できちんと説明しています。ただ、経営者のみなさんも、自分たちの思いやつくりたい世界観に共感できるような人と一緒に働きたいという気持ちが根本にあるので、『ながの人事室』では経営者の知られざる思いや、背景となるストーリーなどをきちんと発信することを強調しています。僕たちが大事にしていることをひとつひとつ丁寧に伝えてきたことで、メディアの価値に共感してくださる方が増えているという実感があります。」

経営者や働く人たちの人柄や思いがきちんと言語化されていることで、記事自体が共感する人に長く訴求するロングテールな内容になっていることも「ながの人事室」の特徴の一つです。

横山さん「これからは、働き方や生き方がさらに多様化していきます。そのなかで選ばれる企業になっていくためにも大事な観点となるのが、良い人材と出会うことができればいつでも採用できるように門戸を開き続けることです。そのため、『ながの人事室』では記事の掲載期限を設けていません。募集が終わったとしても、ウェブ上で記事を公開しておくことができるので、経営者の方から『“名刺”代わりとして使っている』とお知らせいただくこともあります。こんなふうに、中長期的な視点でも活用いただいています。」

中長期的に訴求し続ける魅力的な記事をつくるための鍵となるのは、経営者への丹念なインタビュー。編集長として、記事のディレクションを担当する増村さんにお話を聞きました。

経営者の思いをとことん深堀りするインタビュー記事で、読者に熱量を届ける

「ながの人事室」編集長の増村江利子さん

増村さん「会社を興したり、事業をつくったりするだけでなく、経営を持続させていくことは、本当に一筋縄にはいかない。だからこそ、経営者それぞれにその人なりの思いや経営哲学、苦難を乗り越えていくためのアイデア、その事業を成功させることでつくりたい未来があると思うんですよね。もしかしたら本人でさえも気がついていないようなことも、インタビューを通して明らかにしていく。インタビュー対象者に関する記事がどれだけたくさんオンライン上にあっても、『ながの人事室』がインタビューすると絶対に同じ内容にならない、という自負があります。」

取材時にはなるべく自身も現場に赴くという横山さんは、インタビューに立ち会うなかで心動かされる瞬間がたくさんあるといいます。

横山さん「『ながの人事室』を運営するなかで印象的なのは、やはり経営者の方々へのインタビューです。あくまで僕らは求人メディアの立場としてお話を伺うわけですが、それでも、誰かの人生をここまで深掘りしてお話を伺う機会って本当に少ない。毎回熱量がすごくて『なんだかすごい場面にでくわしちゃったぞ』という感覚があります。」

取材をする経営者は、それぞれに唯一無二な原体験をもち、その上で起こしたい変化や実現したい世界を語ってくださいます。ライターを含む取材班は彼らの声に直接耳を傾け、思いを伺うため、その場の純粋な熱量に圧倒され、インタビュワー自らがその会社で働きたいと思うこともしばしば。実際に、取材を担当したライターが、そのままスタッフとして働いている事例もあるほどです。

話を聞いていたライターが思わず感極まる瞬間も多々ある

横山さん「仕事をする上では、一緒に働く人の本質的な思いの部分にどれだけ共感できるかが、すごく大事だと思っていて。僕たちが『ながの人事室』から生み出したいのは、その場の熱量とか空気感まで伝わってくるような記事。これこそが『ながの人事室』の真髄というか、やはり価値の源泉だと感じていますし、きちんと世の中に届けていきたいですね。」

長野県という地域に根ざしながら事業を行う経営者と、インタビューを重ねるなかで、徐々に明らかになってきたのは、地域のコミュニティや周囲の関係者、社会に生み出すインパクトに対してとことん向き合い続ける経営者たちの姿勢です。そうした彼らの姿勢を増村さんは「実直」という二文字で表現します。

増村さん「一人ひとりの実直な思いって、社会を動かす上での唯一の原動力だと思っているんです。私たちが出会う経営者のみなさんには、それぞれ何か飾ったり盛ったりせず、自分たちの立場や取り組みを通して社会と向き合い、ポジティブな変化を生み出していくための純粋な思いがある。そういった思いや熱量を、読む人に届けたいですね。」

地域の“はたらく”の現状と、企業と働き手のマッチングニーズ

「ながの人事室」の構想がスタートしたのは2021年。当初は、瀧内貫(たきうちとおる)さん(『ながの人事室』統括ディレクター)からの投げかけで、人材サービス会社での実務経験がある横山さん、編集者の増村さんの3名が集まり、それぞれの見地から見たり聞いたりしている長野県の求人にまつわる現状や、感じている課題感について共有しました。

横山さん「人事部を組織内におくことができ、人材育成や採用などにきちんと投資できる大企業と比べて、地域の中小企業が抱える人の課題が根深いことについては3人とも共通して話していたのを覚えています。また、他の求人メディアとの比較をするなかで、中小企業が求人を出したくても、実際には費用面がハードルとなって掲載を断念するケースが多いこと、全国規模の求人メディアがある一方で特定の地域に密着した求人メディアが不在であることもわかってきました。話しあいを重ねながら、僕らとしてできることは何か、少しずつアイデアを深めていきました。」

「MEGURU」で、地域の中小企業の課題をスキルを持った複業人材とのマッチングを通して解決していく「#複活」という事業を塩尻で推進してきた実績がある横山さん。事業を実施するなかで、中小企業が人材について抱えるニーズ、そして地域に関わりたいと考える働き手が抱えるニーズの双方をみてきました。

令和元年度から実施している 「#複活」 では、丁寧なフィールドリサーチや深い対話を通じて経営者のパートナーとなる人材を発掘。これまでに約35社80人マッチングしてきた

横山さん「経営者の思いを深く理解し、共感した上で自身の力を発揮してくれるようなパートナーのような人材となかなか出会うことができないという地域企業はたくさんあります。また、個人に関していえば、コロナ禍を経て地域に関わりたい人や、福利厚生や給与などの条件起点ではなく『この人と働きたい』とか『ミッションが面白そうだと思うところに参画したい』とう人が増えている感覚があって。そういう人たちをマッチングできるサービスをつくろうと立ち上げたのが地域特化型の求人メディア『ながの人事室』でした。」

また、「ながの人事室」ではコロナ禍を経て顕在化しつつある地域企業と働き手のニーズのマッチングを促進するほか、地域に根ざした求人メディアだからこそできる、今までにない新しい働き方を社会に提案していくことも意図しているといいます。

ネーミングは最終的に「ながの人事室」に決まったという。「人事室」としたのは、街場に開かれ、気軽に駆け込めるようなフラットな関係性を構築したかったからだそうだ

増村さん「企業から『手が足りないから誰かに入って欲しい』という声を聞いても、『週5日働いてもらう給料までは出せないんだよなあ』という現状もあります。そんな時、例えば『うちでは経理部門をやって欲しいんだけど週1〜2日でなんとかならないか』という企業が近くにいれば、複数の企業が合同で募集をしてひとりの生業をつくるなどのやり方もあるかもしれません。地域で働くといった時には、こうした新しい働き方をつくるところまでを『ながの人事室』で担うことができたらいいなと考えています。」

熱い思いがある経営者と出会い、自らの経験や活動の幅を広げる絶好のチャン

運営開始から1年が過ぎた「ながの人事室」が抱える当面の課題は、媒体としてのブランド力を強めるための、組織体制の強化です。今回募集をする社会人インターンに、どのような働きを期待しているのでしょうか。

横山さん「業務内容としては、営業や取材のコーディネート、編集、広報、記事掲載などを行う事務など、大きく4種類にわかれています。社会人インターンとして入っていただく方には、各自が持っているスキルや経験に合わせて業務を担当していただきます。」

『ながの人事室』には7名が運営メンバーとして携わる。定例会議は2ヶ月に1回、対面で行われており、実績や今後の方針について話されている

案件やテーマごとに仕事内容を切り出せることから、関わり方はさまざま。横山さんらと一緒に地域の経営者との打ち合わせや取材に同行したり、リモートで広報や記事掲載のサポートを行ったり。自分の強みやこれまでの経験を活かしながら、挑戦する環境を自分で設定することができます。

横山さん「長野県内の面白いプレイヤーと出会い、彼らの熱い思いを言語化していく仕事なので、関わることで人脈を広げていくこともできますし、経営の哲学や戦略など、たくさんの学びがあります。特に僕のように営業やコーディネート業務をやっていると、自分の住んでいるまちで熱い思いを持って活動している経営者や社員のみなさんと直接知り合うことができるので、大変やりがいを感じてます。応募してくださる方も、将来的には地域に根ざしながら独立したいとか、自らの活動の幅を広げていきたいと考ている方だとピッタリの機会かもしれません。」

希望者が多い場合は、複数人以上の社会人インターンの方に関わっていただきつつ、媒体としての成長を加速していきたいとのこと。また「ながの人事室」の運営に関わる業務のほか、代表の横山さんや編集長の増村さんのアシスタント候補となる人材も同時に募集します。

地域に特化する求人メディアとしての成長の在り方

最後に、「ながの人事室」と密接に関わる「MEGURU」としての観点も踏まえながら、「ながの人事室」を通して描きたい未来について、横山さんに伺いました。

横山さん「『ながの人事室』の求人メディアとしてのブランド価値をきちんと確立させることができれば、記事を掲載する企業さんに対して提供できるサービスやメニューを、もっと拡充することができると考えています。例えば、地域おこし協力隊募集に特化した案件を取り扱ったり、掲載した企業さんに対する人材育成や研修なども実施することが可能になるかもしれません。」

「ながの人事室」のメディアとしての機能はあくまで「入口」に近いという。経営者から深い話を聞くことのできる貴重な機会でもあるため、インタビューを通じて新たにこんなことやりましょう!と発展するケースも稀ではないという

「ながの人事室」から生み出すインパクトを持続的なものにするためには、長野県内で取り扱う求人数をさらに増やしていく必要があります。しかし、「MEGURU」が拠点とするのは塩尻市や松本市を中心とする中信地域。そのため、必然的に取り扱う求人案件も、中信地域に集中しがちだといいます。

横山さん「今後は『MEGURU』が中信エリアで担っている“地域の人事部”の機能を長野県各地に広げていきたいです。ただ、それは僕たちがつくるのではなく、それぞれの地域に根付いたプレーヤーや団体が自分たちでつくっていく方がいい。『MEGURU』も、中信地域に拠点を置くからこそ培える関係性があり、“地域の人事部”として機能できている現状があります。同じように、北信や東信、南信地域に活動拠点を置くからこそ生まれるつながりや、担うことができる役割が絶対にあると思うんです。

『MEGURU』としては、そういった人たちにパートナーとして“人事部”のネットワークに参画していただき、それぞれの地域を拠点に各地で『ながの人事室』のサービスを展開していただけたらと考えてます。そして、最終的には『ながの人事室』を地域横断型のプラットフォームとして運営していけたらと考えています。」

地域の人材課題を、多様な関係者とともに解決に導く働きをしている「MEGURU」では、高校生や大学生に向けた教育事業や実践型インターンの事業も実施しています。長期的な視点に立てば、学生のうちから地域に愛着を持った若者が「ながの人事室」の募集で、地域企業に就職する未来も実現できるかもしれません。

ながの人事室の姉妹サービスとして、学生向けインターンサイト「ながの学生インターン室『CLIMEB』」もオープン。想いある経営者と学生のマッチングと交流の場を提供している

横山さん「僕らが高校生や大学生向けに実施しているプログラムに参加した人たちが、近い将来、『ながの人事室』のユーザーになってくれる可能性もあります。学生のうちから、地域で何かチャレンジする経験があったり、地域に愛着を持つことができれば、地域でのキャリアを模索する人たちも増えていくかもしれない。『ながの人事室』をみて、地域で何かチャレンジをしたいという人たちが、一歩踏み出してくれるようになったら嬉しいです。」

多くの求人メディアは、対象とする地域を広げながら取り扱う求人件数を増やすことでスケールしていく傾向にあります。一方、「ながの人事室」は、“地域の人事部”として学生から社会人まで地域の人事課題解決に包括的に取り組む「MEGURU」が運営する求人メディア。地域密着だからこそ発掘できるような求人案件もあれば、地域で育った優秀な人材が地域企業に就職するケースなど、中長期的な時間軸のなかで、さまざまなメリットやソリューションを提供し、スケールしていくことができる強みがあります。

「ながの人事室」が発信するのは、経営者の思いに迫った求人記事だけでなく、地域でよりよく生きるための新しい働き方。まずは、あなたが一歩踏み出すことから。「ながの人事室」の社会人インターンとなり、笑顔があふれる地域での豊かな暮らしや働き方を一緒につくっていきませんか?

文 岩井 美咲

募集要項

[ 会社名/屋号 ]

ながの人事室

[ 募集職種 ]

社会人インターン

[ 取り組んでほしい業務 ]

それぞれのスキルや興味関心、チャレンジしてみたい内容に合わせて①~④のポジションの業務内容を相談していきます。
①法人コーディネーター
②取材・編集
③広報PR
④経営企画(事業計画・サイト運営・自治体連携等)

[ 雇用形態 ]

インターン

[ 給与 ]

報酬はありません
※活動に必要な経費(交通費等)はこちらで負担いたします

[ 勤務地 ]

長野県内・オンライン
※日々のやりとりはSlackで行いながら、2カ月に一度の定例MTGに参加いただきます
※県内在住の方も県外在住の方も応募可能です

[ 勤務時間 ]

それぞれの活動できる時間帯に合わせて業務設計を行います

[ 応募要件・求める人材像 ]

必須スキルはございません。学生の方の応募も可能です。

<求める人物像>
人との出会いを大切にできる方
人の想いや背景、ストーリーに関心を持ち、言語化できる方
はたらくということにお金だけではない価値を感じている方
ながの人事室の想いに共感いただける方

[ 選考プロセス ]

面談1回(リモート or 現地)

面談の中で双方のニーズがすり合えば、インターン実施となります

※取得した個人情報は採用目的以外には使用しません。
※不採用理由についての問い合わせにはお答えできかねます。

[ その他 ]
よろしければこちらもご覧ください。

ながの人事室運営メンバーnote