長野県のほぼ中央に位置する塩尻市。これまで、自営型テレワーク推進事業の「KADO」、市民によるイノベーション創出を支援する「スナバ」、安心して便利に暮らせる地域社会の実現を目指す「塩尻MaaS(マース、※1)」や「自動運転」といった、地域課題の解決や地域活性化に向けて先進的かつ具体的な取り組みを進めてきました。その塩尻市で、地域DXの新たな“核”となり、「最先端の技術を活用し、まちに変革を起こし続ける場所」となることを目指して2023年6月にオープンしたのが地域DX(ディーエックス、デジタルトランスフォーメーション、※2)拠点である「core(コア)塩尻」です。
今回の求人は運営チームの一員として「core塩尻」がつくる価値や機能を理解し、地域内外に発信していくためのプロモーションスタッフを募集するものです。スタッフとなるにあたってcore塩尻を拠点として実施しているプロジェクトや具体的な働き方のイメージについて、施設の運営に携わる「core塩尻」運営チームの荻上真功(おぎうえまさのり)さん、横山梓(よこやまあずさ)さん、また、塩尻市役所の立場から地域のDX戦略や「core塩尻」ができあがるまでのプロセスについて、塩尻市先端産業振興室の太田幸一(おおたこういち)さん、松倉昌希(まつくらまさき)さんにお話を伺いました。
※1: MaaS(マース)とは、Mobility as a Serviceの略。従来の交通手段・サービスに、自動運転やAIなどのさまざまなテクノロジーを掛け合わせた、次世代の交通サービスのことを指す
※2: DX(ディーエックス)とは、デジタルトランスフォーメーションの略。デジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものへと変革することを指す
地域DXの核となり、まちに変革を起こし続ける拠点
まずはじめに、「core塩尻」がどのような場所か、荻上さんに施設の概要を伺いました。
荻上さん「『core塩尻』の館内は、ここを拠点にする多様な主体がプロジェクトの開発や実証を行う会員専用のオフィスエリアと、会員以外でも人の出会いを創発しながらアイデアを形にする交流スペースの2つのエリアに分かれています。」
オフィススペースに関しては、固定型オフィスではなく、ホテルの客室を予約するように必要な時に利用ができるオンデマンド型オフィスのモデルを採用。企業が使いやすいように固定費を抑えながらも、スペースとしての物理的な制約にとらわれず、いろいろな企業に利用していただけるような形となっています。
荻上さん「『core(コア)塩尻』に現在集まってきているのは、太田さんや松倉さんのいる先端産業振興室が一緒に実証実験を進める自動運転やMaaSに関連する企業を主とする9社ほど。最先端の技術を活用しながら、多様なプレーヤーがセクターを越えてつながって、地域課題解決に寄与するサービスを開発するプロジェクトが行われています。」
一方、誰もが出入りできる交流スペースは、地域住民のみなさんに気軽に足を運んでいただけるよう平日9時から19時までオープン。日中は学生やフリーランス、子育て中の方からシニア世代まで、さまざまな人が利用しています。
横山さん「年代層は幅広く、本当にいろいろな方がいらっしゃいます。ひとりでお仕事をされている場合もあれば、趣味のことをやったり、ボランティアの打ち合わせで活用されているケースもあります。」
「core塩尻」では、市内の小中学生の視察受け入れや、デジタル技術に関連したイベントを開催しています。今後は、より多くの人がデジタル技術にアクセスしやすくなるようなデジタル技術の活用支援の講座や相談窓口なども開催予定。地域のデジタルニーズに寄り添ったコンテンツ運営を続けながら、将来的には、地域住民のニーズと、企業や研究機関が持つシーズが掛け合わさって、地域の課題解決につながるプロジェクトが加速度的に生まれていく状況を目指しています。
最先端の技術や取り組みが集まるまち
現在塩尻市では、国内で最先端技術を開発する企業群と連携しながら進めている自動運転プロジェクトや、オンデマンドバス「のるーと」など、「core塩尻」を拠点に、さまざまなDXプロジェクトが走っています。これらの取り組みはどのようにして立ち上がってきたのか。塩尻市役所の職員として、塩尻市のDX戦略の策定メンバーで、ご自身もさまざまなプロジェクトを立ち上げてきた太田さん、松倉さんにお話を伺いました。
塩尻市のDX戦略の原点は、市役所が主導してインターネットサービスプロバイダを運営し、市民がインターネットにアクセスできる環境を整備した2000年頃まで遡るといいます。
太田さん「いわゆるICTサービスを活用したまちづくりをいち早く実装した全国的にも珍しい事例で、これが現在につながる塩尻市のDX戦略の流れの原点になります。こうした取り組みを産業にも活かそうということで、2006年に整備されたのが『塩尻インキュベーションプラザ(以下、SIP)』。IT企業の誘致や技術の集積を行うハブ的な機能を担う場所で、これがきっかけで出会った人と2010年に立ち上げたのが自営型テレワーク推進事業『KADO(カドー)』です。子育てや、介護などの理由でフルタイムで働くことができない人たちなど、さまざまなライフスタイルにあわせて時短で働ける自営型テレワークで仕事を請け負うような仕組みをつくりました。」
プロジェクトの多くは、こうした一連の流れの中で培われたネットワークや知見など、さまざまなアセットが結びつき、有機的に発生したものです。自動運転やMaaSなどのプロジェクトも、例外ではありません。
太田さん「塩尻市で自動運転のプロジェクトがスタートしたのは、『KADO』が自動運転で使われる3次元地図をつくる作業を請け負っていたことがきっかけです。仕事を請け負っているうちに、ここまで地図をつくれるのであれば、発注元の企業と自動運転の社会実装を目指して一緒にやりましょうという話になって。そこからだんだんと市役所内でも官民連携という概念が生まれていき、自動運転から派生してMaaSのようなプロジェクトも誕生しました。」
自然な流れで偶発的に構築されていったようにも取れる塩尻市のDX戦略ですが、市役所としては、塩尻市ならではのDX戦略の定義や、DX戦略を通じて長期的に達成したいことを掲げています。
行政DXと、地域DXの両輪で生活の質をあげていく
太田さん「自動運転などのDXを活用したプロジェクトが本格的に始まる前、松倉くんや他の職員たちと一緒に『そもそも、なぜ塩尻市でDXを推進するのか』を言語化しました。たどり着いた結論は、塩尻市のDX戦略とは、デジタル技術によって生活の質を向上し、誰からも喜ばれるまちを実現するためにあること。そして、それは“行政DX”と、“地域DX”の両輪で動いていくことによって初めて実現するということでした。」
”行政DX”とは、デジタルによって行政組織内部や行政サービスを変革すること。そして、”地域DX”とは、デジタル技術による革新的な都市機能を地域に実装することを意味します。
太田さん「行政内部のDXは、窓口のオンライン化や、紙ベースだった書類などがデジタル化されることで、日々の業務を効率化することなどを指します。もちろんそれによって利用者の利便性は上がりますが、それだけでは住民のみなさんの生活の質の向上に直接的に寄与しづらい。ここで重要な視点は、業務が効率化したことで、職員の手があいて、もっと違うことができるようになるんじゃないか、ということです。」
塩尻市のDX戦略では、行政DXによる組織変革で生まれた人的資源を地域DXの事業に投入し、市としての地域の課題解決につながる持続可能な仕組みをつくることで、中長期的に生活の質を向上させていくことを目指しています。
太田さん「最終的には、職員一人ひとりがそれぞれのポテンシャルを最大限発揮しながら、本当に求められるサービスをまちに実装していくことができたらと考えています。」
しかし、地域でDX事業を実現するとなると、最先端技術やそれを活用するノウハウなどが必要となり、塩尻市のようなコンパクトな規模では自治体単体での実現が難しい場合もあります。そこで、鍵となるのがパートナー企業の存在。今までに前例のない規模のプロジェクトでも、それを実装できるリソースを有する企業とパートナーシップを結ぶことで、実現可能性が高まります。
松倉さん「塩尻市では、自動運転を題材に企業との共創をしてきた経験から、ニーズや課題の抽出から実証実験、サービス実装に至るまでの一連のプロセスのモデル化ができています。新しいサービスを市民のみなさんに届けるためには、実証実験と社会実装というプロセスが必要となりますが、この成功モデルがあることで、企業が、塩尻市のフィールドを使って活動しやすい環境をつくることができます。お互いのビジョンやミッションに共感しつつ、相互補完できるような企業とパートナーシップを組ませていただいています。」
「core塩尻」は、これまでの実証実験などで獲得した知識や経験を糧に、地域DXを今後も加速度的に推進し続けるためのアクションの一環として整備されました。アセットを集積し、育てる場。施設の開設を皮切りに、交通分野にとどまらず、地域DX戦略を通じた地域での課題解決を他の領域にも展開し、ゆくゆくは他地域へ展開することも視野に入れています。
松倉さん「交通でできることだったら、医療福祉や教育、観光や環境など、同様のモデルを使って他の領域でも課題が解決できるかもしれませんし、他の自治体の課題にも応用できるものになるかもしれません。こういった取り組みを継続的にやっていくことを目指して、セクターを越えてさまざまな人が交わるクラスター形成拠点としてつくられたのが『core塩尻』です。ここを軸に、他の分野や地域でも求められるサービスを実装していくことで、最終的には全方位で課題やニーズに対応できるような仕組みを創造する場にしたいと考えています。」
多様なセクターが混じり合う、地域変革の起点に
時代と共に変化する地域の課題やニーズに向き合い、今後も変革を続けていく塩尻市で、地域DXのプロジェクトがたくさん生まれるような場として誕生した「core塩尻」。価値を生み出すプロジェクトが勃興するような場所として機能するために、スタート時には、産・学・官・民の異なるセクターから多様なプレーヤーが集い、交わる場である必要があるという仮説を立てました。
荻上さん「今年の春からは、自動運転やMaaSを通じて、名古屋大学や東京大学との連携も始まり、当初描いていた構想が徐々に現実化しつつあります。」
ただし、情報やネットワーク、資金などさまざまなリソースやアセットが集積するクラスターをさらに活性化するためには、これまでに培ってきたつながりだけでなく、お互いのビジョンやミッションに共感しながら共創関係を構築する新たなパートナーと出会ったり、発掘したりする必要性があります。
その過程において、現時点で特に運営チームが課題と感じているのが、「core塩尻」の価値をしっかりと言語化し、対内的にも対外的にも発信しながら体現していく部分。
横山さん「小中学生や教員のみなさんが見学に来てくださるのですが、今は『すごいなあ』とか、『いつかこんな施設で働いてみたい』など、設備の格好良さが先行して伝わっていると感じています。確かに施設はスタイリッシュで都会的ですが、そういった設備面だけでなく、この施設が生み出すプロジェクトや地域への価値などの中身の格好良さが伝わるといいなと思っています。」
自動運転やMaaSなどをはじめとする実証プロジェクトは日々進展していますが、実証フィールドはまちなかとなり、「core塩尻」で行われるのは形に至るまでの調整や開発に向けた打ち合わせなど、水面化での動きが主になります。
脈々と続く日々のプロセスのなかで一体どのようなことが行われ、実証実験が行われているのか、暮らしを豊かにするサービスがどう実装されているのか。「core塩尻」の価値を理解しながら、確かな言葉で力強く発信する役割を担うのが、今回募集するプロモーションスタッフです。具体的な業務内容や求める人物像について、詳しく伺いました。
「core塩尻」の価値を一緒につくり、発信する仲間
荻上さん「プロモーションスタッフが担う業務は主に3つ。まずはじめに『core塩尻』を拠点に行われるプロジェクトに関する情報発信やコンテンツの品質管理の業務。次に、『core塩尻』の運営スタッフとして施設のシフトに入ってもらうシフト業務。窓口業務を行いながら、イベント企画や運営も一緒に行います。最後が、『core塩尻』のデザインに関わる業務です。」
プロモーション業務は、「core塩尻」のホームページやSNSでの発信に加え、官民協働や実証実験のプロジェクトを発信する塩尻市の専用ウェブサイト「ジャーナル」へのコンテンツ掲載など。運営チームとしてシフト業務も担うため、媒体での発信だけでなく、「core塩尻」のミッションや価値を体現するようなイベントの企画や開催、「core塩尻」をより良い場所にするための課題抽出なども含めた多角的な動きが想定されます。
横山さん「デザイン業務に関しては、フライヤーやファシリティのデザインのほか、イベントページの作成も将来的に担うことを考えると、デザインスキルが望まれます。ただし、初期は『core塩尻』のブランディングやデザインルールの作成などをサポートする外部人材や協力会社が入るため、ベースとなるフォーマットを作成しながら、徐々に業務を移管していく伴走体制も整っています。一緒に考えながら試していけたらと。」
さまざまな領域で、最先端の技術を駆使しながら地域課題を解決するようなサービスが実装されていくプロセスの“核(コア)”となるべくスタートした「core塩尻」。「将来のまちを一緒につくる今の子どもたちにも気づきや発見の場所であってほしい」と、運営チームの荻上さんは語ります。
荻上さん「最終的には、普段からこの場所にきている子どもたちが、人や物事に出会うという体験を通じて『塩尻市って格好良いことやってたよなぁ』と、どこかのタイミングで思い出してもらえるようなきっかけの場所になったら嬉しいです。将来の進路選択につながったり、塩尻市でやっていた自動運転に興味を持って関連企業に就職しても面白いと思います。そのために、塩尻市で行われている面白い事業に触れられる機会をつくったり、身近で働いてる人を『格好良いな』と思うような瞬間に、たくさん出会えるような場所でありたいと思います。」
「core塩尻」があることで、まちの暮らしが豊かになっていく、自分が住みたい、つながりたいと思うまちがずっと続いていく未来。その起点のひとつとなる地域DX拠点の運営チームの一員となり、こんな未来をさらに広げていきませんか。
文 岩井美咲
募集要項
[ 会社名/屋号 ]
一般財団法人塩尻市振興公社
[ 募集職種 ]
【オープニングメンバー】長野県塩尻市の新たなDX拠点「core塩尻」のプロモーションスタッフ
[ 取り組んでほしい業務 ]
塩尻市の新たな地域DX交流拠点「core塩尻」のプロモーションや、施設運営に関わる業務をお任せします。
■具体的には■
①core塩尻で実施しているプロジェクト、イベント等のプロモーション活動
– 地域内外に向け、SNSやプレスリリース等を活用した広報計画立案と情報発信
└ 誰向けに、何を、どのタイミングで、どうやって情報発信するか計画を立て、実行いただきます
②core塩尻の運営に関わる業務
- 窓口対応などの施設運営に関わる業務
└ 窓口対応などのシフト業務やイベントの企画・運営、より良い場所にするための課題抽出等、チームメンバーと共に施設運営を行っていただきます
■ゆくゆくお任せしたい仕事■
③フライヤー、リーフレット等のデザイン業務
- ブランドガイドラインに沿ったフライヤー等の作成
※③の業務は着任当初からお任せするのではなく、協力会社や専任のブランディングデザイナーと共に進めていただきます。着任後は①・②の業務が中心となりますが、ゆくゆくは③の仕事もお任せしたいため、ご経験やご興味のある方にジョインしていただくことを期待しています。
[ 雇用形態 ]
契約社員(試用期間3カ月、その後無期限)
※試用期間中も待遇は変わりません
[ 給与 ]
月給177,800~220,000円
※ご経験や能力を考慮して決定します
※残業代は別途支給いたします
[ 勤務地 ]
長野県塩尻市大門一番町7−1 ウイングロードビル 2F core塩尻
[ 活動時間 ]
8:30~17:15(休憩1時間)
[ 休日休暇 ]
週休2日制(土・日)、祝日、夏季休暇、年末年始休暇、有給休暇、慶弔休暇、療養休暇、その他特別休暇
[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]
昇給あり(毎年)
賞与年2回(6月/12月)
住居手当・駐車場補助あり(上限あり)
通勤手当:片道2kmを超える通勤者に支給(上限あり)
健康保険 厚生年金 労災保険 雇用保険
その他:塩尻市勤労者向け福利厚生サービス「ハピネスセンター」のサービスをご利用いただけます
[ 応募要件・求める人材像 ]
【必須(MUST)】
・企業やイベントでのプロモーションや広報の経験
・独自に仕事進めるだけでなく、内外の協力機関との折衝の経験
・チームで働いた経験
【歓迎(WANT)】
・フライヤーやリーフレットなどのデザイン経験
・イベント企画など企画業務の経験
・多様なステークホルダーを巻き込みながら目的に向け自ら働きかける経
【その他】
オープニングスタッフのため、チームで意見を出し合うことを特に重視しています。自分の意見を伝えながらも、他の人の意見にも耳を傾け、チームで対話しながら物事を前進させるマインドを持った方を求めています。
[ 選考プロセス ]
本ページより応募
↓
書類選考
↓
1次面談
↓
最終面談
↓
内定
※面談は勤務地現地での実施を基本とします。
※取得した個人情報は採用目的以外には使用しません。
※不採用理由についての問い合わせにはお答えできかねます。
※この求人募集は終了いたしました。ご応募をありがとうございました。
この企業・組織での募集が再度行われたときに、お知らせすることができます。
ご希望の方は、こちらから登録してください。