※本求人の応募締め切り(2次募集)は10月30日(水)となります。
長野県の最南端に位置する根羽村は、人口800人ほどの山村です。総面積の9割は森林で、山の資源や源流を生かした独自の取り組みが評価され、2022年度にはSDGs未来都市認定・過疎地域優良事例等を受賞。移住者も増え、2年連続で転入の人口が転出を上回る社会増を記録するなど、盛り上がりを見せています。
今回の求人は、そうした根羽村の取り組みを持続可能にし、さらに発展した村づくりを推進していく役場職員の募集です。村民のために公的サービスを提供することはもちろん、ゆくゆくは「決められた仕事をきちんと行う」という既存の公務員のイメージを超え、「多能工型職員」として活躍していく方を募集しています。
なぜ、根羽村がいま役場職員を募集するのか。どのような村づくりを目指しているのか。そして、所属する役場職員はどのような思いを持って働いているのか。職員の働きやすさを実現する横断プロジェクト「定着率チーム」より、総務課の佐々木邦敏(ささきくにとし)さん、教育委員会 保育所長の松下剛樹(まつしたつねき)さん、住民課の片桐匡朗(かたぎりまさあき)さんと、3年前に移住して教育委員会 学校教育係長として働く元銀行員の石森智(いしもりさとる)さん、役場と連携しながら村づくりを推進する「一般社団法人 ねばのもり」の杉山泰彦さんにお話を聞きました。
2年がかりの全村民インタビューをもとに根羽村の20年後を描く
長野県の最南西部、愛知県豊田市と岐阜県恵那市に隣接する根羽村はかつて宿場町として栄えていました。三州街道・伊那16宿の最南端に位置し、都市部から様々な人や物が往来する土地。村民たちはオープンなマインドを持ち、村外の価値観を柔軟に受け入れてきました。
当時の精神は現代にも引き継がれ、5年で100人以上の多様なバックグラウンドを持った人たちが移住したり、地域おこし協力隊制度の活用や様々な事業者との官民連携を通して、村づくりを行なっています。例えば2019年には、環境省の実証事業の一環として、外部コーディネーターによる村づくりのためのワークショップを実施。2021年には、それをもとにテレワークも可能な村民同士の交流拠点「くりや」が生まれました。
他にも、山林で牛を放牧する山地酪農や、移住や起業にトライアルしたい人向けのトライアルシェアハウスの運営、県内外の大学や企業と連携した木育活動、豊かな自然と村暮らしを体験する山村留学など、ユニークな取り組みがいくつも生まれています。その結果、根羽村は2年連続の社会増を実現し、消滅可能性都市から脱却。過疎地域の優良事例として政府にも認められるようになりました。
そんな根羽村の村づくりの中心には役場があります。これまでは村内や公務員学校への告知を通じて人を募ってきましたが、このたび、本格的に対外向けの募集を実施しています。このタイミングで求人募集をする背景を、役場から移住業務も委託されている杉山さんはこう語ります。
杉山さん「根羽村の魅力をきちんと発信できれば、移住者や役場職員を増やすことはそこまで難しくないと思います。難しいのは、理想ばかり見せすぎると現実とのギャップが生まれ、転職をしてきても離職につながってしまうことです。ここ数年で役場の体制が強化され、実となる部分が出てきたのを感じたので、このタイミングで対外的な募集をしよう、と役場に提案しました。」
杉山さんの言う「役場の体制強化」が本格的に進んだのは、2021年から。前述した「くりや」のような取り組みを持続可能なものにするために、地域力創造アドバイザーを招いて役場職員への研修プログラムを実施しました。
内容は、職員が自ら根羽村の課題を設定して、解決するプロジェクトを立ち上げるというもの。立ち上がったプロジェクトのなかで代表的なものの一つが「全村民インタビュー」です。村民の意向を「根羽村総合計画」に反映させるねらいがあります。
杉山さん「10年に一度更新される総合計画は、村の運営方針を決める大事な計画です。しかし、トップダウンで策定していたため、村民を巻き込み切れていないのが課題でした。そこで、2025年度に改訂予定の根羽村総合計画は、小さな村であることを逆手に取り、全世帯の声を拾い上げてボトムアップでつくることに。移住して間もない役場職員と村民が触れ合い、関係性を深めることにもつながります。」
全村民インタビューは、コロナ禍を挟み、約2年かけて346世帯498名(全世帯の84.4%)に実施されました。拾い上げた声をもとに「20年後の根羽村について考える会」を開催。2日間にわたり、村民と職員が一緒になって根羽村の大切にしたいことや、目指したい未来について話し合いました。
終業後の交流、ダーツやカラオケが定着率向上の鍵?
役場研修から生まれた他のプロジェクトとしては、役場職員の定着率向上をはかる「定着率チーム」があります。定着率チームの中心的なメンバーは、佐々木さん、片桐さん、松下さんの3名。全員Uターンで根羽村に帰ってきた中堅職員です。「定着率チーム」を立ち上げた背景には役場職員の離職率の高さがあったと、佐々木さんはいいます。
佐々木さん「たしか最初は、職員同士で若手職員の離職が続いている事について話をしていたんですよね。職員が少ないから仕事量が膨大なうえ、若手職員が離職してしまい残った職員の負担が増えていることを感じていました。また、次世代を担うメンバーが抜けることで将来の役場の年齢構成等の体制への不安や、このまま、いまの忙しさが永遠に続くのではないかという不安を感じていたんです。」
そこで佐々木さんたち中堅職員は、過去の職員の離職率を遡ることに。計算した結果、かなり高いことが発覚しました。危機感が芽生えた佐々木さんらは定着率チームを発足し、役場の働きやすさを改善する取り組みを開始。
現在の主な取り組みは「新規職員に対するオンボーディング研修」です。一般的な企業の新入研修とは違い、業務についてだけでなく村の暮らしについてもサポートする手厚い内容になっています。
片桐さん「新規職員研修は、仕事と暮らしの大前提を伝える7日間の研修です。以前は、着任してすぐに配属課で先輩や上司から担当業務を教えてもらい、仕事を進めるなかで並行して役場のルールや施設の使い方などを習うケースが多くありました。しかし、このやり方では、暮らしも仕事も人間関係も新しい環境のなかで仕事を覚え、こなしていかなければならないIターンの職員にとってはすごい負荷があったと思います。
なので、担当業務に就く前に、プログラムとして体系的に根羽村役場の職員としての心得、役場のルールなど大前提を教えることにしました。また、村の地理、歴史、お店の情報、誰々さんがどこに住んでいるかなど、暮らしをサポートする情報も伝えます。仕事と暮らしの導入部分をスムーズにすることで、担当業務の習得につなげることを目的としているんです。加えて、プログラムを通じて、できるだけ多くの先輩職員にも参加してもらうことで、配属課以外の業務を知ったり、他の職員とのコミュニケーションのきっかけ作りになるような研修になっています。」
「定着率チーム」は情報提供のみならず、人間関係の近さを活かした具体的なサポートも行っています。
佐々木さん「一人暮らし自体が初めてで、自炊の経験がない職員もいます。コンビニやフードデリバリーのない村で暮らすうえで、自炊ができないのは致命的。役場のみんなで『彼のご飯をどうしようか?』と会議をしたこともあります。そのときは、同期の職員がご飯のつくり方を教えてあげたり、僕の家に食べにきてもらったりしながら自炊生活ができるようサポートしました。」
都会の企業では、同僚の家にご飯を食べにいく関係性は珍しいかもしれません。しかし、根羽村ではよくあることです。実際、佐々木さんの家は、若手職員が集まり、食事をしたりダーツやカラオケを楽しんだりする場になっており、根羽村のラウンドワンと言われることもあるようです。
佐々木さん「『定着率チーム』のなかで新規職員の『メンター』としてサポートすることになりましたが、なにをすればいいかわからなかったんです。だから、会社員時代に先輩に飲みに連れて行ってもらい悩みなどを聞いてもらっていたことを思い出して、新規職員を自宅での食事に誘うようになりました。きっかけはメンターとしての部分もありましたが、元々賑やかなのが好きだったというのもあります。今では遊びに来てくれる職員のみんなに自分も子供達も遊んでもらって楽しんでいます(笑)。」
佐々木さん家での交流は、「定着率チーム」の公式な取り組みではありません。しかし、そうした非公式な場のほうが本音の会話が生まれやすかったりするもの。実際、「最近は新規職員とも友達のような関係になり、気軽に相談してくれることも増えた」といいます。
こうした取り組みが積み重なり、役場職員の定着率が向上する兆しが見えてきました。2022年度に入職した4名の職員は、現在も継続して働いています。2年目になる職員が後輩の新入職員へ仕事を教える場面も出てきたそうです。
役場で働いた時間を、人生の大切な経験にしてほしい
「定着率チーム」の今後について、松下さんはこう語ります。
松下さん「まずは人事の部署と連携をしながら、2024年度の3名の採用を目指して進めたいと思います。それに絡めて、受け入れ体制や研修をより良いものに改善していきたいです。あとは、この活動を自分たちだけにとどめず、次世代にも引き継げるようにしていきたいと思います。」
また、この活動を続けるなかで、3名が考える「定着率チーム」の目指すものが少しずつ変わったといいます。もともとは、単に「社員が辞めないようにする」ことを目指していましたが、今はより中長期的にいい関係性を築くことに重きを置いています。
片桐さん「みんな自分の人生を生きているのだから、どこかで辞める決断をすることもあると思います。大切なのは、辞めた人とも良い関係が築けていること。辞めた後も村を好きでいてくれたり、応援してくれたりする関係性をつくっていきたいです。」
働き方の多様化が叫ばれる時代において、企業だけでなく自治体の雇用の在り方にも変化が求められます。「役場で働いた時間が、その人の人生にとって大切な経験となれば」と語る3名からは、そうした潮流を捉える感性の鋭さや、価値観の柔軟さを感じました。
「人の優しさに驚いた」元銀行員が感じた根羽村の第一印象
「定着率チーム」の頑張りもあり、より働きやすい職場へと変わりつつある根羽村役場。「定着率チーム」以外の職員はこの環境をどう感じているのでしょうか。長野県の銀行に長年勤め、2020年にIターンとして根羽村に移住、役場に転職した石森さんにお話を聞いてみます。
石森さんは銀行員として順調に成績をあげ、34歳で県内の店舗の課長に昇進しました。しかし、「プレイングマネージャーとして、営業と支店のマネジメントを掛け持つことに疲れてしまった」と語ります。もう少し緩やかな働き方をしようと40歳で公務員への転職を決意。根羽村役場を選んだ理由は年齢によるところが大きかったようです。
石森さん「長野県内で働きたいと思い、長野県の官公庁の求人サイトをよく見ていました。長野県には77の市町村があり、そのうち求人が出ていたのは40程度。ただ、ほとんどの求人の年齢制限が35歳で、数えで41歳となる自分が応募できるのは根羽村役場と長野県庁だけでした。先に試験があって内定をいただいた根羽村役場で働くことに決めました。」
当時の石森さんは結婚してから1年半、第一子が生まれて7ヶ月。そんな状況のなか、移住と転職に踏み切れたのは家族からの後押しがあったからだといいます。
石森さん「妻は『なんとかなるだろう』と楽観的に考えてくれました。妻のご両親も賛同してくれました。私が仕事に疲れ切っていたのを知っていたので、環境を変えることを前向きに捉えてくれたのだと思います。」
同じ長野県内とはいえ、見ず知らずの土地に移住することには不安がつきもの。しかし、山が好きだったこともあり、自然豊かな根羽村での生活は想像以上に快適だったそう。市街地まで車で1時間かかることも、「家族のプチ旅行として、毎週末楽しみに出かけています」とポジティブに捉えています。
また、役場の人の印象について聞くと「人が優しくて驚いた」と答えてくれました。
石森さん「住む家を探しにきたときの村の対応に感動しました。住宅の候補をいくつか用意してくれていましたし、ガス業者も手配してくれて、その場ですぐに開通ができたんです。引越し当日も、一緒に村を周って案内してくれました。
職場のみなさんからも、仕事について優しく丁寧に教えていただきました。わからないことを質問すると、答えをくれるだけではなく、なぜその答えなのかの背景知識や、関連する事柄についても説明してくれます。私が所属した教育委員会はそういう環境でした。」
現在、教育委員会の学校教育係長として、学校との連携や教育長の補佐など、学校にまつわる幅広い業務を請け負う石森さん。学校環境を改善することで、先生や児童・生徒、保護者から感謝してもらえることにやりがいを感じるといいます。
また、事務のようなコツコツと丁寧に進める仕事が得意な石森さんは、その力を活かして本業以外のプロジェクトにも参加。前述した「全村民インタビュー」で集めた膨大な意見をまとめる役割も担いました。
石森さん「インタビューで集めたご意見をまとめて、いくつかの伝わりやすいキーワードに集約させました。正直、本業のほうに支障が出そうなくらい時間がかかりましたが、一字一句こだわって最終的にはいいものにできたと満足しています。」
柔軟な発想力と着実な実行力を掛け合わせ、根羽村の未来をつくる
石森さんは現在の働き方について、「転職前に想像していたよりも忙しいけれどストレスは少ない」と語ります。また、人口800人の小さな村で働くからこその魅力についても教えてくれました。
石森さん「何をするにも素早く動けるのがいいところですね。以前、小学校5、6年生向けの総合的な学習の時間で、根羽村の事業者のインタビュー動画をつくりました。その際、電話1本で事業者への取材許可を取れたんです。
大きな市町村でやるとしたら、そもそもアポ取りに時間がかかり、許可取りはさらに時間がかかります。しかし、根羽村ならみんな顔見知りなので話が早く、かつ村民が新しい取り組みに理解があり、基本的に前向きに受け入れてくれる。小さな村ならではの魅力だと思いました。」
一方、根羽村役場の課題点としては「部署を超えた連携」を挙げます。目指すゴールが同じであれば部署を超えて連携することで、よりスムーズに進行できるものもあるといいます。
石森さん「行政という組織では、業務の効率化のために役割の線引きがきっちりしているからこそ、縦割りで進める方が効率的に回っていくことが多くあります。でも、住民の生活を良くするという意味で重なり合う部分がある場合、もう少し部署を超えて歩み寄れれば、よりうまくいくものもあると思います。」
前述した「定着率チーム」は、まさに縦割りの組織に横串を通すプロジェクトです。その担い手である佐々木さん、松下さん、片桐さんに対して、石森さんは期待を寄せます。
石森さん「3人は地元出身で村民との関係も良好。役場組織についての理解があり、若手職員からも慕われています。そうした土台があって、かつ柔軟な発想力を持っている彼らなら、役場も村もいい方向に変えていけると期待しています。」
最後に石森さんは、これからの役場に必要な人材像を語ってくれました。「定着率チーム」のような「柔軟な発想を持つ人が求められている」と考える一方、「発想が得意でなくても、コツコツ真面目に仕事ができる人も必要」と、語ります。
石森さん「自由な発想をする人が活躍するためにも、調整役になる人が必要です。私自身がそうだからということもありますが、アイデアを思いつくタイプでなくても、役場で活躍する場所はあるということを伝えたいと思います。
それに、根羽村役場には「定着率チーム」や「全村民インタビュー」など、本業以外のプロジェクトにも関われる機会があるので、やりたいと思うことに積極的に挑戦すれば、できることが広がっていくと思います。『多能工型職員』とは、まさにそうやって多様な能力を身につけた姿。コツコツと真面目に働くことをベースにしながら、柔軟に発想する力も身につけて変化を起こせる人になっていくというのが、今の私の目標です。」
終業時刻間近の役場では、職員が率先して床やトイレ掃除を行うといいます。聞いたところによれば、村長も掃除に参加するのだそう。そうした慣習のなかに、職員のみなさんが日々大切にされているものがあるように思います。
それはきっと「自分たちの村は、自分たちでつくる」という考え方。都会と比べて人口も資源も少ない根羽村では、足りないものがたくさんあるかもしれません。でもそれを嘆くのではなく、一つずつ自分たちでつくることを楽しもうとする意思がここにはある。制約を楽しみ、創造を楽しむ。そんな人が根羽村役場で活躍していく未来が思い浮かびました。
文 佐藤 史紹
募集要項
[ 会社名/屋号 ]
根羽村役場
[ 募集職種 ]
一般行政職
[ 取り組んでほしい業務 ]
・役場内のいずれかの課に配属後、事務業務を担当
・村の暮らしごこちを高め、村民が豊かに暮らすための支援
・企業・自治体と協力しながらの村づくり
[ 雇用形態 ]
正職員(試用期間6か月)
[ 給与 ]
<新卒採用の場合>
大学卒 196,200円
短大卒 179,100円
高校卒 166,600円
<民間企業10年勤務中途採用の場合>
大学卒 226,800円
短大卒 210,600円
高校卒 196,200円
※都会と根羽村のような山村では、物価に大きな開きがあります。住居費・生活費も安く抑えられるため、給与も比例して見合う金額に設定されています。
[ 勤務地 ]
長野県下伊那郡根羽村2131-1
[ 勤務時間 ]
8:30~17:15(休憩時間12:00~13:00)
[ 休日休暇 ]
・週休2日制(土・日) 祝日
・夏季休暇
・年末年始
・有給休暇
・特別休暇
[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]
・昇給年1回 賞与(年 2 回支給 昨年実績4.5ヶ月)
・時間外勤務手当
・扶養手当
・住居手当
・通勤手当
・共済組合加入
[ 応募要件・求める人材像 ]
・公務員としての意識を持って業務に取り組める方
・村民とのコミュニケーションを大切にしながら、村のためにできることを考えられる方
[ 選考プロセス ]
※本求人の応募締め切り(2次募集)は10月30日(水)となります。
【一次試験】高校卒業程度のSPI3
【二次試験】個別面接
[ その他 ]
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根羽村HP
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