春秋は米やトウモロコシをはじめとする農作業、夏は道の駅、冬はスキー場で働く。大自然の中でめぐる四季を肌で感じながら、地域に根ざす複数の現場で働き、理想の暮らしをつくっていく。そして、地域の事業者は繁忙期の人手が足りないときだけ、働き手を迎え入れることができる。

田舎暮らしに憧れるけれど安定的な仕事が見つからない不安がある移住希望者と、人口減少と高齢化で担い手不足が加速する地域。日本各地の地方都市で共通の課題となりつつあるこのジレンマを、新たな仕組みで乗り越える動きが、今、長野県北部の信濃町で始まっています。

この仕組みを実現していくために、2025年5月に発足したのが「信州しなのまち複業協同組合」です。

今回は、信濃町の地域人事コーディネーター(地域おこし協力隊)として、立ち上げから間もない信州しなのまち複業協同組合(以下、組合)の事業を一緒に興していく仲間を募集しています。

移住者と地域、双方の声に耳を傾けながら、信濃町での新たな働き方をつくる、町や地域事業者としても期待の大きいポジションです。

今後20年間で生産年齢人口は半数に

まずは組合が発足した背景と、構想している事業の仕組みについて、信濃町役場の担当課である総務課まちづくり企画係の川口彰(かわぐち・あきら)さんにお話を伺いました。

信濃町役場総務課まちづくり企画係の川口さん。地域の現状と向き合いながら独自の移住定住施策を仕掛ける

信濃町は長野県北部、スキーリゾートとして人気の妙高高原にほど近い新潟県との県境に位置し、長野市からは電車で約40分ほどでアクセスできます。人口7,000人ほどの小さなまちですが、黒姫山と妙高山に抱かれた美しい自然に魅了され、移住希望者が年々増加傾向にある人気のエリアです。特にウィンタースポーツを趣味とする人にとっては、車で10分も走ればスキー場へ滑りにいけるため絶好のロケーションです。

一方で、住民の高齢化や、若者を中心とした人口流出に歯止めがかからない現状も。信濃町による人口シミュレーションによると、この先2040年までに生産年齢人口は47%減少するという深刻な状況が予測されています。すでに、農業や製造業、観光業、医療・福祉など、地域を支える多くの現場で担い手、働き手不足が課題となっています。

このような状況を受けて、川口さんが所属するまちづくり企画係では、空き家活用や企業誘致、結婚支援など、さまざまな移住定住施策を行ってきました。しかし、県外からの移住者を誘致を進めるうえで、大きな課題となっているのが働く場所の確保です。

特別豪雪地帯に指定されている信濃町。2月上旬の取材日は青空が広がったが、屋根や道路には積雪が残っていた。この日は晴れて久しぶりに雪下ろしができたという

川口さん「町内の多くの事業者さんは働き手不足や高齢化に悩まれているので、仕事そのものはあります。でも、信濃町は四季がはっきりとしていて、仕事も季節に左右されるので、通年で雇用することが難しい事業者さんがほとんど。働き手が一つの会社に固定されるのではなく、地域全体で雇用し、季節ごとに現場へ派遣することができれば、地域の働き手不足の解消と移住者の仕事の確保が同時に実現できます。そこで、総務省の『特定地域づくり事業協同組合制度』を活用して生まれたのが信州しなのまち複業協同組合です」

長野県内ではすでに生坂村や小谷村、飯綱町に先行事例があり、全国139市町村(2026年1月30日現在)が利用するこの制度に名乗りを挙げ、2025年5月に町内11事業者の出資で、組合が発足しました。

一つの地域で複数の仕事を持つ“マルチワーカー”という働き方を支える

複数の仕事や職場を持つような、一人が複数の仕事を担うマルチワーカーという働き方が広がれば、地域の担い手不足の問題を解決できるのではないかー。組合はこれから“マルチワーカー”を正規雇用し、町内の事業者に派遣するという新しい仕組みで地域の雇用を支えようとしています。

現在、組合員として参加している事業者は、野尻湖の定期船を運行する会社や、ゲストハウス、リゾートスキー場、食品製造業、農家などさまざま。これらの事業者がそれぞれの繁忙期にマルチワーカーの受け入れ先となります。

信濃町でのマルチワークという働き方(イメージ図)(画像提供:信濃町)

これらの事業所を組み合わせ、第1期マルチワーカー(2026年2月まで募集)の派遣先として、季節ごとに働く先が変わる7つのコースを企画しました。ワーカーは自身の得意な分野や興味関心に合わせてコースを選びます。例えば、春は建設会社が運営するジェラート屋、夏は道の駅、冬は食品製造業など、異なる現場で働きながら、地域に密着した仕事を経験することができるのです。

第1期の受け入れ先として基本7コースを設定。ワーカーは数ヶ月単位で勤務先を変えながら、組合からの固定給を受け取ることができる

今回募集する地域人事コーディネーターは、組合員のヒアリングを通してそれぞれのニーズを丁寧に吸い上げ、コースを企画したり、ワーカーとのマッチングを行うことが主な仕事です。

川口さん「地域のさまざまな事業者さんとやりとりをするので、この仕事を通して信濃町に人一倍詳しくなれると思います。どんな仕事があるのかを知るためにも、地域人事コーディネーター自身が実際に事業者さんのもとへ足を運び業務を体験する場面も想定しています」

それぞれの仕事を客観的な立場で体験したり、ヒアリングを重ねながら、当事者にとっては当たり前で気づきにくい仕事のやりがいや、面白さを見つけていく。そして、それを言語化し、移住希望者に届ける。そんな役割が期待されています。

好奇心旺盛に、地域からのあらゆる期待を背負って

組合の代表理事である有限会社仁の蔵(にのくら)の代表取締役、石川広之(いしかわ・ひろゆき)さんにもお話を伺いました。石川さんは農家として米や、特産品のとうもろこしを育てながら、農産物直売所やそば屋も経営されています。

終始、笑顔で組合に対する期待を語ってくれた石川さん。過去には信濃町の消防団長も務めるなど、地域からの信頼は厚い

石川さん「この取り組みに対する期待は大きいよ。町の産業に対して、広く興味を持って、理解しようとしてくれる人に来てもらいたいね。農業だけとか、この事業者だけ、というのではなくてね、町全体のことを見てもらわないといけないから。好奇心を持って、誰とでも楽しくコミュニケーションを取れるといいね」

分野を限定せず、幅広く興味を持ち、時には実際に仕事を体験しながら各事業所の仕事の魅力を発見してほしいという石川さん。

続いて、新井匠(あらい・たくみ)さんも新しい取り組みに対する期待を語ります。新井さんは「道の駅しなの」の支配人として、観光地としての信濃町を支えています。

道の駅しなの支配人の新井さん。取材は道の駅の2階で行われた

新井さん「組合はまだ始まったばかり。地域での認知度もこれから高めていく必要があります。だからこそ、地域内の事業者さんとの関係構築はぜひ丁寧に築き上げていただけると嬉しいですね。道の駅では夏が繁忙期になります。繁忙期のレジ対応や野菜の発送をしてくれるだけで、とてもありがたいです。その分、メインの職員が他の業務に専念することができるので。そういったワーカーの受け入れ先としての期待も持っています」

地域内の各事業者は一見、人員数としては必要数を満たしているようでも、実際には人材構成に課題を抱えている企業もあります。

川口さん「たとえば、必要人数が5人の場合、従業員が5人在籍していれば、数字上は足りているように見えます。しかし内情を見ると、従業員の年代は60代、70代と高齢化しており、若手が不足しているケースも少なくありません。経営者自身も日々の業務に追われ、5年後、10年後を見据えた経営戦略を描く余裕がないケースも見られます。マルチワーカー制度がうまく活用されれば、こうした地域の“隠れニーズ”も満たすことができます」

派遣・人事・経理、多岐にわたる事務作業

現在、組合は役場別棟の一室に事務所を構え、役場職員の松木和幸(まつき・かずゆき)さんが事務局長を務めています。部屋に入ると松木さんのデスクには、派遣業や事務に関わる厚い書籍が積み重なっていました。

松木さん「組合の仕事は派遣業にあたるため、私も今まさに勉強中です。組合員の事業者さんと個別に契約を結ぶ以上、労務や人事の知識も欠かせません。基本的には事務局長である私が行いますが、事務作業や調整作業はサポートしてもらうことになると思います。そういった仕事も得意だとありがたいですね」

これから組合員を増やしていく中で、関わる事業所や人もどんどん広がっていきます。現場を飛び回りながら、地域のニーズを把握し、それを実際のコースや募集要項に反映させていく。同時に、東京での移住フェアなどで、信濃町で働き暮らす魅力を発信する。地域人事コーディネーター自身は日々現場を行き来しながら、外へ発信していく働き方になりそうです。

松木さん「やはり、地域に貢献したいという意識がないと、この仕組み自体をうまく回していくのは難しいと感じています。結局はこの地域の事業者さんへの愛着であったり、『ここに人をつなぎたい』という思いがあるかどうかが重要なんですよね。単に人を呼んで終わりではなくて、その人たちを地域にどうつないでいくのか、結果としてこの地域が今後どうなっていくのか、そこまで見据えられる方が必要だと思っています」

協力隊の3年間で制度の基盤づくりから発展まで

地域おこし協力隊の任期は最長で3年間。役場では1年ごとにミッションを設定し、3年後にはこのマルチワーカー制度が町に定着し、次の展開へと発展させることを見据えています。

最初の1年は地域理解と基盤づくりの期間です。事業者へのヒアリングを中心に進めます。移住者としての客観的な視点を持ちながら、地域の課題や事業者のニーズを丁寧に理解し、その上で新たな移住者や地域の若者を惹きつける求人内容へと落とし込んでいきます。

組合の事務所(地域人事コーディネーターの職場)は役場別棟の一室にある

同時に教育機関との連携支援や、短期滞在プログラムの企画など、組合の業務にとどまらず、地域全体の「人事部」としての役割を担っていきます。事業者・学校・行政など関係者との接点を増やしながら、受け入れ体制や情報発信の基盤を整えていきます。

2年目以降は、1年目のヒアリング結果をもとに、マルチワークの仕組みをパッケージ化します。短期滞在やインターンの受け入れを本格化し、都市部での募集・PR活動にも取り組むことで、地域外の人材に対して具体的な選択肢を提示できる体制を整えていきます。

そして3年目に目指すのは、年間を通じた滞在・就労モデルの確立です。運用で得た知見をもとに仕組みに落とし込み、継続的に回る仕組みとして定着させます。さらに、組合への機能移管や引き継ぎを見据えながら、地域おこし協力隊の卒隊後も希望があれば、地域でキャリアを築けるよう支援し、地域に人材が根付く流れをつくります。

川口さん「3年間のミッションはある程度設計してあるので、業務の方向性に迷うことはないと思います。ただ、地域に定着してもらうためのメンタル面のケアや移住者同士のコミュニティ形成についてはまだ十分とは言えません。ワーカーさんを迎え入れるにあたってはそういった点にも気を配っていただけるといいですね」

現在、信濃町には地域おこし協力隊が12名所属しています。これまでの地域おこし協力隊は役場各課の専任でした。地域人事コーディネーターとしての募集は今回が初めてです。役場では今後は協力隊同士のコミュニティも育てていきたいと考えています。

川口さん「今回の取り組みは、単なる人数合わせとしての派遣業ではなく、地域を将来的に存続させていくための移住施策の一環だと考えています。協力隊の方には、外に出て実際に事業者や移住者と話をしながら、『この方であればあの農家さんが合いそうだ』とか、『この方はスキー場の仕事が適していそうだ』といった形で、地域の仕事と人材を結びつける役割を特に期待しています。対話を重ねる中で、『この方はこの事業者さんにつなげたい』『この方はこの社長に引き合わせたい』といった感覚が自然と見えてくる。その積み重ねこそが重要だと感じています」

自分自身も移住者の一人として、地域への理解を深めながら、これからの信濃町を働き手として支える仲間を増やしていく。小さな地域だからこその、顔の見える関係性の中で、自分の心の届く範囲の人たちの役に立てる環境があります。

移住者だからこそ、見えるものがある。変えられることがある。町からの大きな期待を背負い、移住者と地域の声に耳を傾けながら、地域のためにエネルギーを注げる方との出会いを待っています。

文 杉田映理子
編集 岩井美咲
写真 西優紀美

募集要項

[ 会社名/屋号 ]

信濃町

[ 募集職種 ]

地域おこし協力隊(地域人事コーディネーター)

[ 取り組んでほしい業務 ]

(1)地域事業者の人材ニーズ把握とマッチング支援【主体業務】
   地域の「人事部」として、町の働き方づくりの中心を担います。
(2)短期滞在を通じた地域体験・就労プログラムの企画・検討【主体業務】
   ふるさとワーキングホリデーを含む短期受入の枠組みを、
   企画段階から地域とともに創る役割です。
(3)教育機関との連携(インターンシップ等)の企画・実施支援【サポート業務】
   関係人口担当の協力隊や担当課と連携し、若者が地域とつながる機会
   づくりを共に進めます。
(4)地域魅力の発信・情報整理【サポート業務】
   関係人口担当の協力隊と協働しながら、地域の「働く・暮らす」の魅力を
   発信します。

[ 雇用形態 ]

信濃町の会計年度任用職員(年度ごとに再任用判断、最長3年間)

[ 給与 ]

月額 290,000円(賞与無し)

[ 勤務地 ]

信濃町役場総務課まちづくり企画係もしくは信州しなのまち複業協同組合事務所に設置予定です。(デスク設置予定)
※研修等のため町外での活動ありり

[ 勤務時間 ]

8:30~17:15(休憩1時間)(1日7.75時間)
・活動内容に応じて勤務時間調整可
・月17日勤務(131.75時間/月)

[ 休日休暇 ]

土曜日、日曜日、祝日、年末年始
・イベントや研修等で休日出勤が発生する場合は、別日に振替となります。
・年次有給休暇を利用することができます。
・夏季休暇など年次有給休暇以外の休暇を利用することができます。

[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]

・住居
町が用意します。基本的に家賃は無償です。
光熱水費は自己負担
転居に係る旅費や経費は自己負担
・活動経費
公用車を使用(通勤・日常生活用は自家用車)
パソコン貸与(持ち出し不可)
活動に必要な消耗品費や研修費は町が負担(予算範囲内)
・社会保険
健康保険(共済保険)
厚生年金保険
雇用保険
非常勤職員等公務災害補償 または 労災保険加入
・副業(兼業)可(ただし町の承認が必要)
・その他
携帯電話・インターネット等の通信費は自己負担

[ 応募要件・求める人材像 ]

<必須要項>
・三大都市圏や条件不利地域以外の都市地域に現在住所がある方
・採用後、信濃町に移住し住民票を異動できる方
・任期終了後も信濃町に居住する意向のある方
・地方公務員法に基づく欠格事由に該当しない方
・普通自動車免許を有する方
・パソコンの基本操作およびSNSの活用ができる方

<求める人物像>
・人や地域とのつながりをつくることが好きな方
・季節に応じた働き方をデザインすることに興味がある方
・新しい仕組みづくりや改善に前向きに取り組める方
・自走しながら学び続ける姿勢のある方
・自然や地域の暮らしに魅力を感じられる方
・自身の働き方や生き方を“DIY 的”にデザインしたい方

<歓迎要件>
・人事・採用・キャリア支援等の経験がある方(理想的)
・経理・経営に関わる実務経験を持つ方を歓迎します
・教育機関・学生支援業務の経験 ・イベント企画・広報業務の経験
・情報整理・文章作成が得意、または挑戦したい方

[ 選考プロセス ]

・エントリー(募集フォームより申込)
応募資格確認後、面談日程を調整

・カジュアル面談(WEB)
信濃町担当者による町の紹介と業務内容の説明
応募者の質問受付

・応募受付(正式応募)
提出書類
信濃町地域おこし協力隊応募用紙(指定様式)
住民票(1ヶ月以内)
普通自動車運転免許証の写し(表・裏)
資格証明書の写し(資格保持者のみ)

・書類審査
提出書類をもとに選考し、応募者全員に結果通知

・採用面接(Webまたは現地)
書類選考通過者対象
現地面接の交通費は自己負担

・最終結果の通知
選考終了後、文書で通知

[ 募集締切 ]

カジュアル面談エントリー応募受付期間
令和8年3月9日(月)~ 3月25日(水)

[ その他 ]
こちらもご覧ください。
信濃町ホームページ


個別相談も可能です

応募前に質問や確認したいことがある方は個別相談を受け付けます。
◎企業担当者と応募前に事前に説明や相談を行うことができます。

どんな会社なのか、実際の働き方はどうなるかなど、気になる点をざっくばらんにお話ししましょう。