有限会社ケーアンドケーメディカルは、1998年に設立。地元の老舗家具店から独立した市川伊知郎さんが、介護用品と家具の販売・レンタルを行う会社として創業しました。

会社のある佐久市に隣接する佐久穂町に生まれ育った市川さんは、佐久穂町役場の職員としてキャリアをスタートさせました。以来、常に地元密着型で、関わる人たちとの関係性を大切に仕事に取り組み、つい先日還暦を迎えたところです。社長業の傍ら地域のつながりと健康増進のためのNPOを立ち上げ代表も務めるなど、穏やかながら情熱と行動力にあふれる市川さんに、創業時からこれまでのことをじっくりと語っていただきました。

「人との関係性」を何より大切にしてきた

ケーアンドケーメディカルの創業時は、2年後に日本で初めて介護保険制度がスタートするというタイミングで、たくさんの企業が介護関連の事業に参入しました。しかし市川さんによると、この20数年の間に多くの企業が撤退していったそう。

市川さん「同業種で残っているところは5分の1くらい。この地域でもレンタルだけで何十社もありましたが、今も営業を続けているのは5社くらいです。」

介護関連のビジネスを行う会社には、介護保険制度のもとで法令遵守が求められます。度重なる制度改定で必要な資格やサービス提供価格のルールなども頻繁に変わる上、年に一度の監査で違反が指摘されれば営業停止の可能性も。国の要請にきちんと対応しつつ経営も成り立たせていくことが、非常に難しい世界なのです。

そんななかで生き残っているのは、リピーターとなってくれるお客さんや取引先さんなどと良いお付き合いを続けてこられたからだと、市川さん。最初は南佐久地域が中心だったお客さんは現在、小諸、軽井沢や上田など東信地域全体にも広がっています。

そして10年前には、自社製品の開発にも乗り出しました。「お年寄りが座りやすい椅子を」と品質を追求するうちに他社と共同で新技術まで生み出し、介護分野だけでなく高級リゾートホテルなどの新たな市場の開拓につながっています。

介護事業への参入は、おじいちゃん子、おばあちゃん子だったから

生まれ育った佐久穂町の公務員として10年働き、縁あって地元の家具店を手伝うことになった市川さん。結婚や新築のタイミングで大きな家具をまとめて購入してもらうという個人向けのビジネスモデルは時代に合わないと考え、病院や行政施設などへの営業に力を入れました。「介護保険制度が始まる」という情報を得たのは、そうやって親しくなった病院の関係者からでした。

市川さん「介護保険の話を聞いて、これからは家具の販売だけでなくレンタルのニーズがあるというのがおもしろいなと感じました。私は大のおじいちゃん子、おばあちゃん子だったんです。昔ながらの三世代同居の家で、おじいちゃんは小学生のときに亡くなりましたが、おばあちゃんとは二十歳過ぎまでずっと一緒に過ごしました。地域のおじいちゃんやおばあちゃんのお手伝いがしたいと思い、会社をつくることにしたんです。」

人とのつながりを何より大切にする市川さん

市川さんが常に大切にしていることは、人とのつながりです。最初の職場である町役場の職員や現町長とも良い関係が続いていて、それが仕事のやりやすさにつながっている面もあるとのこと。お客さんに対しても、買ってもらうのは二の次で、まずは顔を覚えてもらう、小さくても喜んでもらえることをする、ということに注力してきました。

市川さん「会社をつくったとき、すぐ近くの佐久総合病院さんに営業に行きました。最初は『どこにできたの?』『何をやる会社なの?』という説明から始め、周りを見回してみると壊れた車椅子があったんです。修理に出すとおっしゃるので、『じゃあ、私が修理しましょう』と言って引き取りました。私もパンク修理くらいならできますからね。それで、できるだけ良い状態にしてお持ちしたところ、『これからは修理をお願いするよ』と言ってもらえて。そんなことを1年も続けているうちに、そろそろ車椅子を買ってくれるんじゃないかなと思っていたんですけど(笑)、1年経っても全く販売にはつながりませんでした。2年続けてもダメで、3年目で初めて『車椅子の販売もできるんだよね?』と聞かれ、30台の注文をいただきました。」

納入前の夜中に車椅子のダンボールを開け、すべての車椅子に「K&K」というシールを貼ったときの嬉しい気持ち。それが今でも忘れられないと、市川さんは顔をほころばせました。

市川さん「まずは喜んでもらうこと。結果はすぐには出ないものだと思っています。」

「人のために」という思いから自社商品、新技術が生まれた

ちょうど10年前に50歳になったのを機に「何か新しいことを始めてみたい」と考えた市川さんは、オリジナルの椅子の開発に取り組みました。

市川さん「高齢者の方が施設で寝たきりにならないように、ベッドから離れてもらうためのものができないかな、と考えました。椅子だったら施設に持っていけると思ったんです。車椅子って、病人になったと感じてしまってテンションが下がっちゃうんですよね。だから、身体機能が低下した方でも座るのが嬉しくなるような椅子をつくることにしました。」

最初は桜や栗など、利用者にとって思い出のある木の素材を選べる椅子をつくってみたそうです。しかし、木材の違いという価値はなかなか伝わりづらく、うまくいきません。お客さんの声を聞いた市川さんは、求められているのは「座りやすさ」と「使い勝手」だと気づき、コンセプトを変えました。これが、いま販売している「STRIX(ストリックス)」という椅子やクッションのブランドへと結実したのです。

高齢者が使う椅子において「座りやすさ」のポイントは何か。座っていて疲れないことはもちろん、蒸れないことも重要なのだそうです。一方で、食べこぼしや失禁などで汚れやすいため、手入れのしやすさが「使い勝手」につながります。

汚れの拭き取りやすさを考えれば、シートはビニール製のものなどが扱いやすい。でも、座っていると汗でベタベタしたりして心地が良いものではありません。そこで市川さんは、背面と座面のクッションの形状を工夫して疲れづらさと風通しの良さを実現したり、布地の撥水加工の技術を高めることで、「座りやすさ」と「使い勝手」の両立を追求したのです。

お客様の困りごとを何とか解決しようとする中で製品化したSTRIX

撥水加工に関しては、当初はメーカーが出している既存の撥水剤を使っていました。しかし、生地の摩擦が多い椅子という製品の性質上、撥水効果が保ちづらいという問題がありました。市川さんは「もっと撥水効果の強いものができませんか」とメーカーの本社まで相談に行きましたが、逆に「こういう使い方をされては困る。うちの製品の信用が落ちるからやめてくれ」と言われてしまいます。

市川さん「これはもう、自分たちでつくらなきゃダメだ、と思いました。それで、知り合いに聞いたりしていろいろなところを当たり、良い会社を見つけたんです。『こういうものをつくりたいと考えているんだけど、共同でやりませんか』と持ちかけて、共同開発がスタートしました。」

最初はとにかく撥水効果を追求していましたが、途中からはホテルのプールサイドなどでの利用にも活路を見出し、雨にぬれてもカビが生えないという機能も付加することに。カビを専門とする研究者のいる、東京の産業技術支援センターの力も借りて開発を進めました。

市川さんは化学の専門家ではないので、撥水や防カビの技術について詳しいわけではありません。むしろ素人だからこそ、専門家を相手に「もっと、こんなことができませんか?」と提案することができました。専門家の方たちも「今までやってこなかったことだからこそ、おもしろい」と、試行錯誤の上で希望を満たす技術ができました。現在は、共同で特許を申請中です。

様々な方々の協力により非常に高い撥水性や防カビ効果を実現

今はない技術をつくり出すために奔走し、多くの人や会社を巻き込んで実現していくエネルギーは、いったいどこから湧いてくるのでしょう?そう尋ねると、市川さんは「目の前に困っている人がいたら、なんとかしてあげたい。そうやって人のお手伝いをできることに喜びを感じるんです」と力強く答えてくださいました。

市川さん「とはいえ、自分にはほとんど能力がありませんからね。『これを解決するにはどうしたらいいだろう』ということで、いろいろな人たちのご意見を聞いたり、力をお借りしたりしながらやっていくんです。」

失敗するかも、投資が無駄になるかも、とは思わないんですか?とさらに問うと、市川さんは「正直言うと、無駄だらけです」と笑いました。

市川さん「やるだけやってみる、ということです。精一杯やってみて、『こういうふうにやってみたけど、こうでした』ということなら、相手にも納得してもらえるでしょう。でも、何もやらずに『そんなこと、できませんよ』と言うだけでは、その人との信頼関係は生まれないと思うんですよね。それに、やってみることで自分の勉強にもなります。その過程でいろいろな人たちとも知り合える。結果がダメだったとしても、知らないことをやってみるのはすごく楽しい。だから、無駄は財産なんですよね。無駄をたくさんやってきたことが、多少は自分の自信につながっているのかもしれません。」

まずはお客さんに喜んでもらえることを

人の役に立つことが喜び、新しいことにチャレンジするのが大好き、という市川さんがいま最もワクワクしているのは、介護施設や高齢者向けという枠を超えた、新たな市場の開拓です。

高齢者が座りやすく使いやすいものを、と考えてつくった椅子や撥水加工技術は、高級リゾートホテルやアミューズメントパークなどでも需要があることが分かってきました。

市川さん「一流のホテルなどは、プラスチックやビニール製の椅子は使いません。座り心地や非日常的な高級感を大切にしますから、やはり布張りがいいんです。管理もしっかりされていますが、汚れを取ったりカビが生えないように乾かしたりといったことにすごく手間がかかります。それが、私たちの製品を使うことによって管理がすごく楽になるということで、非常に喜ばれているんです。」

すでに関東の大型アミューズメントパークや各地の大手ホテルに特注の椅子やクッションを納入していますが、さらに広めていきたいと市川さん。

市川さん「いまは特に、沖縄での営業に力を入れたいと考えています。すでに小浜島や石垣島のホテルで使っていただいているのですが、沖縄はリゾートホテルの数が圧倒的ですからね。展示会などに積極的に出していきたいです。」

今回、ケーアンドケーメディカルは2つの職種で人材を募集しますが、ひとつは営業職で、このような展示会で製品の魅力を伝えたり、お客さんとの関係づくりをできる人を求めています。営業となれば、やはりノルマがあるのでしょうか?と尋ねると、「ありません」と明言されました。

市川さん「まずはお客さんに喜んでもらうこと、お客さんと接する中でいろいろなことに気づいていくことが大事ですから。『一生懸命やろう』とはいいますけれど『もっと売れ』とは言いません。言ったから売れるというものでもないでしょう。」

仕事のペースも応相談で、最初は業務委託契約で始め、もっとやっていきたいとなったら社員として入社してもらうことも可能とのこと。現在も、フリーランスで営業を手伝ってくれる人がいて、遠方のお客さんのところに行ってもらったりすることがあるそうです。

市川さん「今はコロナで動きづらいところがありますが、これが収まれば本当に楽しい仕事だと思いますよ。普段はなかなか行けないようなリゾートに行けるだけでなく、そういった業界の裏方の動きや困りごとも見えるので、とてもやりがいがあります。」

家族のような社員に助けてもらっている

もう一件の募集は、介護用品の販売・レンタルに関する事務職です。新規事業に期待をかけているといっても、「やはり基盤は介護事業にあって、STRIXが生まれたのも高齢者の方に喜んでもらいたいという思いがあったから」と市川さん。今は事務の担当者が3人いますが、より強化するためにもう1人採用をしたいと考えています。

専門知識が必要なので新しいことを学ぶのが苦でない方、そしてパソコンを使うのが得意な方がいればぜひ、とのこと。とはいえ、ずっとパソコンに向き合うわけではなく、電話を受けたり、店を訪れるお客さんと直接お話したりし、相談にのるような機会もあります。

市川さん「この地域のおじいちゃん、おばあちゃんのお役に立てる仕事ですから、非常にやりがいのある仕事だと思います。」

市川さんは、お客さんや取引先だけでなく、社員の方との関係づくりももちろん大事にしています。

市川さん「毎年年末には、この事務所でみんなでそば打ちをして、持って帰って家族と食べるんですよ。取引先の会社の人たちもそれを聞きつけて、『そば打ちを手伝うから食べさせて』と来たりして(笑)。会社だけれども、家族的な感じで和気あいあいとやっています。」

社員や地域のたくさんの方から愛される市川さん

先日、市川さんが還暦を迎えた日には、「会議があるから」と呼ばれて会議室に行くとサプライズのお祝いが用意されていたそう。60本のバラの他に、社員やその家族、取引先や市川さんが代表をしているNPOのスタッフなど、たくさんの人からの寄せ書きをもらったことを、嬉しそうに話してださいました。

市川さんは「みんなには助けてもらうばかり」と言います。周りの人も、「市川さんはいつも『俺はできないから、助けてくれ』って言うんです」と証言します。市川さんに「助けてほしい」と言われ、その情熱に動かされて一緒に知恵を絞り、力を貸す人たちの輪があちこちにできているようです。決して人を強制的に動かそうとはしないけれど、人を巻き込むエネルギーと魅力がある、そんな市川さんの近くで働いてみたいと思った方は、ぜひご連絡ください。

文 やつづかえり

※ 撮影のため、取材時はマスクを外していただきました。

募集要項

[ 会社名/屋号 ]

有限会社ケーアンドケーメディカル

[ 募集職種 ]

(1)営業・販路拡大、業界フェアの出店補助
(2)事務・営業

[ 取り組んでほしい業務 ]

(1)新規事業であるSTRIXの販路拡大に伴走頂きます。現在、STRIXはその機能性やデザインから様々な業界より引き合いがございます。STRIXの魅力をより様々な方へ伝えて頂くパートナーとしてご活躍いただきたいと考えています。

(2)福祉用具レンタル、販売等に関する管理業務・営業事務棟を行っていただきます。常に新しい知識・情報が必要な業界なので研修等を受ける機会も豊富で、いずれはお客様の相談員にもなっていただきたいと考えています。

[ 雇用形態 ]

(1)業務委託(将来的な正社員雇用も想定)
(2)正社員

※詳細は応募者の方とのご相談により決定します

[ 給与 ]

(1)月額報酬 150,000円~300,000円
(2)基本給 160,000円〜230,000円

※詳細は応募者の方とのご相談により決定します

[ 勤務地 ]

(1)リモートワークを想定
※都市圏で営業を行っていただける方歓迎

(2)長野県佐久市臼田1935

[ 勤務時間 ]

(1)業務内容やご経験によって個別ご相談
(2)9:00~18:00(休憩時間12:00~13:00)

[ 休日休暇 ]

(1)業務委託のため指定せず(稼働日は要相談)
(2)土曜日,日曜日,祝日,その他、年間休日120日 (当社勤務カレンダーによる 令和4年)

[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]

・賞与:前年度実績年2回(但し実績による)
・昇給年1回
・正社員は退職金制度あり

[ 応募要件・求める人材像 ]

(1)
・営業経験をお持ちの方
・宿泊、観光、レジャーなどSTRIXの販売先となる顧客とのネットワークをお持ちの方
・STRIXを通じてお客様の喜びをともに生み出したい方

(2)
・PC操作スキル、事務職経験などお持ちの方歓迎
・介護請求経験があれば尚可
・これからニーズの増える福祉介護業界の専門性を身に着けたい方
・ゆくゆくはお客様の相談役として活躍したい方

[ 選考プロセス ]

書類選考

面接1回

内定

[ その他 ]

よろしければ、こちらもご覧ください。

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