こんなにいいまちはないと思ってる。
ご飯が美味しくて、農産物が豊富で、ノンストレス。
ちょっといけば誰もいない自然と温泉もあるし。

「つまり、長野県の生活環境は最高」と、笑顔で話すのは、飲食を通じて地域の魅力を発掘・発信する合同会社U.I.international代表の君島さん。長野市権堂にある「古民家dining BAR GOFUKU」をはじめ、北信地域を中心に5店舗の直営店を手がけるほか、飲食店運営の経験やノウハウを元にしたコンサルティング業務、イベントの企画運営など、さまざまな事業を展開しています。

いつでも中心にあるのは好奇心。食を通じて消費型社会に疑問を投げかけながら、3つの分野で一緒に働く仲間を募集します。

飲食店の役割を考えて実践を重ねる

取材に伺ったのは、長野市・善光寺門前にある「HAKKO MONZEN」。HAKKOは、合同会社U.I.internationalが手がけるブランドです。HAKKO MONZENは、山ノ内町にあるHAKKO YAMANOUCHIに続く2店舗目で、新型コロナウイルス感染症が流行する直前の2019年にオープン。長野市の観光の中心にあって、周辺は学生も多いまち。たくさんの人に気軽に発酵文化に触れてほしいと、どこかほっとする家庭の味を提供しています。

君島さん「お客様が、“食べる”という機能を叶えるだけの飲食店は、必要がなくなってしまうんではないかなと思うんです。サービス業である以上、足を運ぶ理由がいる。僕の考える食の原点は“農”にあります。”発酵って身体に良さそう””信州の野菜って美味しそう”、いいイメージを持つ人は多いけれど、その食べ方や生産者までは知らない人が多いんじゃないでしょうか。」

長野県には、野菜や果物など魅力的な食材がたくさんあります。発酵食でいえば、代表的な信州野菜を漬けた野沢菜漬けや、日本で消費される味噌の全体シェア46%を占める信州味噌。日本酒の酒蔵は県内に約80あり、新潟県に次いで全国第2位。気候や地形を活かした農、畜産物は、挙げはじめればキリがありません。

君島さん「僕らの店舗は、ただ食事をするだけではなく、こうした食材との出会いと関係性の輪を広げる場所でありたいと考えています。例えば映画館って、新しい世界観や非日常との出会いがあるから、足を運びたくなるんじゃないかなと思っていて。それを飲食店に置き換えると、“食べる”を通じて得られるものはたくさんあると思っています。」

HAKKO MONZENの店内。「信州発酵文化を世界に」をコンセプトに8つの発酵食品を使った創作料理を提供する©U.I.international

君島さんが手掛けている場所には、魅力的な人、食材、建物が揃っています。ストーリーに合わせてつくられたコンセプトは誰も真似できないし、ひとつとして同じものはありません。“発酵イズム”のネオンが目を引く「HAKKO MONZEN」も、もとは大正時代に建てられた足袋屋なのだとか。歴史のあるかっこいい建物は、君島さんにとって、食に並ぶ大切なキーワードだといいます。

君島さん「競合他社と勝負をする点が“価格”になってしまうとダメなんです。家で食べるより安いよね、だから食べに行こうってなると、どうしても手頃なチェーン店が勝ちますよね。なぜここで飲食をやっているのかを考えたとき、食べる空間そのものにこだわる必要を感じました。」

伝えたいことを考えて知識を得るほど、自分たちで手を動かしたくなる。そうして2021年にできた小布施町の新店「KUTEN。」では、大学生を交えて店舗のDIYにも取り組みました。

岩松院の敷地内にあった施設を、ほぼ自分たちでリノベーション。情報を発信し、オープン前からファンを取り込んだ©U.I.international

次なるチャレンジは、県内南信地域にある大鹿村が舞台になるのだそう。コンビニもない電波ギリギリの村で、地元の人をサポートしながらHAKKOをオープンすると話します。

君島さん「逆境に燃えるタイプですね。なぜやるかって聞かれたら“楽しいから”なんですけど、なぜ楽しいんですかって聞かれたら、子どもの頃のゲームの延長なのかもしれません。もっぱらレゴとシミュレーションゲームをやっていて、想像を積み上げた先に、自分の世界ができるのに夢中でした。小さい頃から何かをつくり出すのが好きなんです。」

知るから生まれる疑問。食への関心が、消費社会への危機意識に

自分たちの会社だからこそできる唯一無二な手法で、出会い・驚き・知識のある「食」のショールームをつくり、人と地域をつなげる。そんな君島さんと食の出会いは、2011年に遡ります。

生まれは長野県長野市。アパレル業を営む父と母のもと、長男として生まれた君島さん。物心ついたときには「父の事業を継ぐ」という、使命感のようなものを持っていました。

君島さん「とはいえ高校時代は一刻も早く長野県を出たくて、都内の大学に進学しました。経営を学びましたが、就職活動はリーマンショックが重なって全滅。人生の闇期ですね。社会から必要とされていない気がしてストレスで体調を崩し、結局長野に戻りました。

運よく家業のアパレルで小売店を持ちましたが、誰かのつくった服ではなく、自分の魂がこもった商品を世に出したいと、ずっとくすぶっていたように思います。まずは元気を取り戻そうと思い、仕事のかたわらで、生活のリズムや食事を研究しました。」

農業をしていた祖母の存在をきっかけに、いつしか興味は”食事”から“農”へ。休みのたびに、近隣の農家を訪問するようになりました。生産者の声を直に聞くのは、今までにはない体験。同年代のおもしろい農家と出会い、いつも食べていた祖母の野菜が当たり前ではないと気がついたそうです。

君島さん「まさに灯台下暗し。なかでも農薬や流通の話は目から鱗で、自分の価値観が一気に広がっていくのを感じました。すぐ近くでこんなに美味しい野菜がつくられているのに、同年代の友だちは誰も知らない。”知ってもらいたい”と、強く思いました。」

ちょうど東京の有楽町や青山では、生産者が直接販売に立つマルシェが流行りはじめた時期。「これだ」と感じた君島さんは、アパレル業のかたわら、米や野菜、ハチミツを車に積んで出店を繰り返しました。

君島さん「ただやっぱり、イベントは天気に左右されるしロスが多い。考えた結果、都内でレンタルキッチンを借りて、売れ残った野菜を使うパーティを企画したんです。もともと料理が好きだったので、大学の友人を招いてお酒を仕入れて振る舞いました。これが”飲食”の始まりです。」

闇の時期の葛藤が、起業の困難を乗り越えるエネルギーに変わっていった

食への好奇心は起業の不安も越え、長野市権堂に、今はなき自分循環型の店、「farmers kitchen」をオープン。軒先の八百屋で野菜を売りながら、店内でカレーをつくって提供し、ロスを減らす。メディアへの露出が増え、地域や企業とのコミュニティが広がっていきました。

次の転機は2015年。八十二銀行が手掛ける「株式会社WAKUWAKUやまのうち」のプロジェクトに参画するため、合同会社U.I.internationalを設立した年です。改めて「飲食でガツっとやっていこう」と、決意が固まったといいます。

飲食店は、君島さんにとって“情報の宝庫”。カフェレストラン、居酒屋、バー、さまざまな業態がありますが、その裏側には、多くの業者や生産者がつながっています。

君島さん「でも実は、農家さんと直接やり取りしているところって少ないんじゃないでしょうか。疑問が湧いてきますよね。なんで自分は長野でお店をやっているのに、他の県の野菜を使っているんだろう?って。しかも県外の野菜の方が安いとか、買い物をしていても普通にあるじゃないですか。そこに違和感を持つことが、情報につながる第一歩だと思います。」

現在の店舗アルバイトは、近隣にある長野県立大学、信州大学の学生が多いのだとか。なかには仲間と商売をしていたり、起業をしている人もいるようです。

君島さん「とにかく一度経験をしてほしい、と伝えるようにしています。商売をするとか、野菜を売るとか、金額は小さいかもしれないけれど、自分で仕入れて値段をつけ、お客様に交渉、接客して売るっていう行為をやってみてほしい。規模が違うだけで、これは全ての商売の原点だと僕は思います。一連の経験をしておくと、社会人になってからも見える景色が広がって強いだろうなって。」

浅間温泉や長野市街地で手掛けるマーケット企画などのソフト事業は、君島さんにとって、そうした好奇心の強い学生や若者と接する貴重な場。生産者の元に足を運び、お客さんにストーリーを伝えて買ってもらう、という経験をしてもらいたい場でもあります。

君島さん「ただシフト通り働いて、過ごした時間分の時給をもらうという経験だけでは、新たな知識や価値観を得る機会は少なくなります。でもよく見ると、飲食店やアルバイトでやる仕事にはいろいろな要素が集まっている。当社でのアルバイトやイベント企画がきっかけで入社を決める学生がいるくらい、現場での体験は濃く、学びが腑に落ちる瞬間が多いと思います。」

美味しい、楽しいから、もう一歩深いところで興味を持ってもらえる瞬間が嬉しい、と話す君島さん
歴史ある温泉街、浅間温泉にキッチンカーが集合し、県内各地を巡るフード・ドリンクの専門店が出店する「ASAMA KITCHEN」。松本市浅間温泉エリアの観光活性化を目的として、U.I.internationalがイベントの企画運営を担当した©U.I.international

企業の役割のひとつは、知識と経験を与えること。例えば、U.I.internationalでは、事業の立ち上げに携わり、自ら企画する経験を積むことで、中長期的に次々と若手人材を地域にインキュベーションしていくことができます。

君島さん「私はこういうカフェをやりたいんです、こういうサービスをやりたいんです、っていう人に来てほしいなと思います。喜んで外に出すし、相性のいい事業ならうちで立ち上げてもいい。生涯サラリーマンでいてくれとは思っていなくて、仕事を通じておもしろい事業を長野で仕掛けてくれる仲間を増やしたいんです。」

実践している君島さんや各店長から、ビジネスの構造的な話を直に聞けるのもU.I.internationalの魅力です。

君島さん「もちろん店舗ではこだわりを100%表現したいけど、商売としてやるには原価とか、さまざまなハードルがあるじゃないですか。こだわり過ぎても、3,000円の定食ではお客様に売れないぞ、とか。制約の中でバランスを考えなければならないというシビアな面もあります。」

例えばお米。飲食店が使うお米は、およそ1kg100円から500円まで幅があります。値段は背景にあるストーリーを考える物差しだ、と君島さんは考えています。

君島さん「うちで使っているのは飯山市の米で、だいたい1kg500円。生産者の思いや工夫、食卓に上がるまでのストーリーを考えれば、決して高くはありません。ただ、気軽に消費者まで届けるのは難しい。今、個人的に一番興味があるのは、この消費者の思考です。」

私たちはスーパーで買い物をするとき、どうやって食べ物を選んでいるだろう。値段、手頃さ、パッケージの可愛さなど、あまり考えずに、パッと手に取ってはいないでしょうか。

君島さん「僕も、学生時代は安さ第一でした。でもだから、オーガニック農家とか、こだわりの在来種の種を使っている農家の野菜は値段も高く、消費者に選ばれにくいんです。そもそもスーパーなどの店頭に並ばない流通も問題だとは思いますが、仮に今、スーパーにそれらが並んだとしても、価格が2倍では売れないんですよね。」

薄利多売が当たり前になっている日本の消費社会を指摘する君島さん

君島さん「うちの従業員やバイトも、店を出ればいち消費者です。そうした世界を知らないまま、本当に自信を持ってうちの定食が出せるのか、ストーリーをお客さんに伝えられるのか、っていう。

いきなり変わるのは難しいので、まずは知ること。SDGsとか、自然エネルギーなどを耳にしたとき、”それってどういうことなんだろう”、”自分にとってどういう価値があるんだろう”と考えられるような、啓蒙活動が必要です。コロナ禍を経て、クオリティの高いものや体に優しいものを選ぶという価値観は徐々に育っていると思うので、今が少しずつ変わるチャンスだと考えています。」

大量生産大量消費の社会は、環境負荷だけでなく所得や収入にもつながっています。負の循環をどう好転させていくか、君島さんは、食を取り巻く社会課題にも取り組んでいく覚悟でいます。

君島さん「それはもう、一人じゃどうにもできないんです。僕らも決まったルールの上で商売をしているし、システムの中で生きているので、理解しないといけない。”じゃあ払っている税金って何?” ”所得税って何%?国や自治体はそれを何に使っているの?”など、知らないのが当たり前なのはまずい。どれを掘り下げても同じ課題に直面する気がします。

やっぱり農産物は採れたてが美味しいし、使い古された言葉かもしれないけれど、地産地消は大事にしたい。輸送費をかけるくらいなら、地域の農にお金を循環させたいです。観光に訪れる人だって、その地で育った野菜を食べたいんじゃないかな。」

知らないこと、考えないことが問題であって、知った上で「今日は安い輸入の野菜や果物を選ぶ」でもいい。美味しい食材の価値と適正な価格を実感し、判断できる人が増えれば、もっと幸せな社会が実現するのかもしれません。

探求を続ける実践者を増やしたい

U.I.internationalは、今後も実店舗とコンサルティング・企画提案の両輪で展開していくのだそう。

君島さん「うちが他社のコンサルができるのは、直営店舗というリアルがあるからです。周りより先にチャレンジをして、取り組みも食材も試し、経験する。食にまつわる川上から川下まで、最新事例やおもしろいネタの仕入れは欠かしません。」

現在は、正社員が12名と、パートアルバイトが約50名在籍。平均年齢は25歳で、アルバイトは大学生が中心、店長はいずれも30歳前後です。

君島さん「特に県外出身者の雇用に力を入れています。長野県民の雇用は3割くらい。新しい目線で長野を見てもらえるので、切り口がおもしろいし、感覚の違いがありがたいなと思っています。」

今回募集をするのは、「長野県内の自治体や企業のコンサルティングを担う人材」「長野県外の自治体や企業コンサルティングを担う人材」と「直営店舗の運営に携わる人材」の3カテゴリだそう。コロナ禍で増えたというコンサルティング業務は、県内と県外の案件が半々くらいで、民間企業を中心に、自治体や、観光協会のような第三セクターと一緒に仕事をすることも。

君島さん「コンサルタント人材は、自治体や企業のやりたい事、新たに挑戦したい事を我々のノウハウを用いてサポートする仕事です。何事にも好奇心が旺盛で、情報収集も得意な方が向いていると思います。」

リアル店舗は、主体的に所属するお店の事を率先して考えられる人材でポジションはマネージャー、ホール接客、キッチン調理の全ポジションを募集しています。

君島さん「飲食業って、キッチンやお酒の提供など専門知識もいるのですが、未経験者でも応募可能です。勤務地も自分の興味のある場所や住みたい場所、各店舗のカラーや営業形態で希望を伝えていただければ嬉しいです。」

求める人物像は「なんでそのアクションをするのか、僕が気になってしょうがない人」

”なんでその考えなの?”っていう、ツッコミどころのある人がほしいですね。仕事なのでやるべきことはありますが、お客様にも仲間にも配慮ができるような、人と人の気持ちの良い付き合いのできる人が理想です。“私の世代ではこういうのが流行ってますよ”とか“このまちにはこういうのがあります”など、一緒に探求したいし、知りたい。僕が知らない事や地域のことを逆に教えて欲しいです(笑)。」

せっかくの人生、仕事のために時間を使うのだから、志を持って、どうしたらできるかを描いてみる。ストーリー満載の合同会社U.I.internationalの各事業には、「農」と「食」の新たな文化やビジネスとの出会いが待っているようです。

文 間藤まりの

※ 撮影のため、取材時はマスクを外していただきました。

募集要項

[ 会社名/屋号 ]

合同会社U.I.international

[ 募集職種 ]

(1)飲食コンサルタント(地域職転勤無)
(2)飲食コンサルタント(域外食 県外転勤有)
(3)直営店舗のマネージメント業務

[ 取り組んでほしい業務 ]

(1)(2)企画書の作成業務、新規案件の獲得(営業)

(3)飲食店舗の運営管理(ホール、キッチン、予約管理、売上管理等)

[ 雇用形態 ]

(a)正社員(試用期間3ヶ月)
(b)業務委託契約(ゆくゆく正社員になることも可能、リモートワーク可能)

[ 給与 ]

(1)(2)月額200,000円〜300,000円(スキル経験により変動)
(3)月給180,000円〜250,000円(経験や業績により変動)

※休日出勤手当有、残業手当有、有給休暇制度、社会保険完備

[ 勤務地 ]

(1)(3)長野県内(勤務地に関しては面接を経て入社前に決定)
(2)勤務地に関しては面接を経て入社前に決定

[ 勤務時間 ]

(1)(2)フレックスタイム制(面接を経て入社前に決定)
(3)所属店舗の営業時間に準ずる

[ 休日休暇 ]

週休日制(曜日は所属により変動)、有給休暇制度有

[ 昇給・賞与・待遇・福利厚生 ]

・健康保険、健康保険、労災保険、厚生年金、通勤手当有り
・賞与昇給(業績により変動)
※業務委託契約の場合上記制度は無し

[ 応募要件 ]

<必須要件>
・普通自動車運転免許証
・ExcelやPowerPointなどの基本操作

<求める人材像>
・「食」や「農」の産業に興味関心の高い方
・相手の気持ちに寄り添ったコミュニケーションができる方
・何事にも好奇心と謙虚さをお持ちの方

[ 選考プロセス ]

書類選考

面接1回(リモートでも可能)

筆記試験

面接1回(リモートでも可能)

内定

※選考期間は約2~3週間程度を想定しています
※取得した個人情報は採用目的以外には使用しません。
※不採用理由についての問い合わせにはお答えできかねます。

[ その他 ]

よろしければ、こちらもご覧ください。

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Bistro ブーコ
KUTEN。fruit&cake
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